甘い瑕を
舐めて
後篇



先生の白い背中をしっかり抱えて。

俺はそのまま寝室に連れ込んだ。
キスだけで起っちまってた先生は盛大に文句を言ったけど、俺がソコをにぎったら静かになった。

男は分かりやすいよな。

先生が恥ずかしがるといけないんで俺もガチガチのソコを先生の太ももにこすりつけてお互い様だってことを主張しておく。

俺は気にしないことでも、14歳年上だとか、上司だったとか、師だったとか、結構こだわりがあるらしくって。
そこら辺をナイガシロにすると、そのあとでちっとも燃えてくれないから、キチンとそこはクリアしておく必要があるんだ。


自傷癖がある、とまでは言わないけれど、先生はとても自分に厳しい。

自分が傷つくことにひどく無頓着だ。
だから。
先生に、言いたくないことを言わせる時は、痛い目にあわせても駄目なんだ。
…いや、俺はそんなことしたことねぇし、これからだってそんなことはしねぇけどさ。

先生は…辛かったことや哀しかったこと、自分一人で抱えて、独りで我慢する、そんなところがあるから。
俺とこうなってから…いや、こうなる前からだけど…俺の荷物まで一緒に抱えてくれた。

でもな、先生。

俺もいつまでも先生におんぶにだっこの子供じゃねぇッて。
先生の辛いことも聞かせて欲しい、って思う。
生意気かな…?



「なぁ、先生。なんでそんなに飯、早く喰うの…?」

先生の中に、後ろからゆっくりと出し入れしながら先生のうなじに向かってそっと聞いてみる。

「ん、んあ…な、なに…?なに…が?」
「なんか…オンオフの切り替えのうめぇ先生がさ。任務中でもないのに、なんでそんなにいつも大慌てで飯、食うのかなって……」
「……ん、あ、って、お前……それって今、聞くこと…?」

確かに、俺は先生の中で絶好調な大きさになってるし、片手で握ってる先生のソレは先端からだらだらと先走りをこぼしてる。こんなやってる最中にする話じゃねぇよな。
だけどさ。
普段、いつもの時に聞いたら、口のうまい先生に、俺っていっつも言い負かされてごまかされちまうだろ…?
こんなときでもなきゃ、先生、本音、いわねぇから。
「今…聞きたいってば、先生…」
「ん、あ、あ…」
「なぁ、先生。なんで…?」
「……た、んなる…癖…でしょ……」
素直じゃねぇ。…確かに癖だろうけどよ。なんでそんな癖がついたんだってば。そこが知りてぇんだって。俺は。
「そんな癖、なんで付けたんだってばよ。体にわりぃだろ…?」
「覚えてな…ぁっ!」
意地っ張りな先生の体を後ろから抱え起こして、胡坐をかいた膝の上に座らせた。
「ナ、ナルト……ふ、深…あああ…!」
今にもいきそうな先生の硬く濡れたモノの根元を握ったまま、腰を腹筋だけで揺らしてやれば、先生は俺の肩口にのけぞって息をつめた。

「思い出してよ、先生。」
「…っ…!ナルト…意地…悪い……っ!」
「…なぁ…」
「ナ…ナルト…い、イかせろ…、あ…も…!!」

体をよじって早い呼吸をする先生は絶品だけど、引きずったまんまじゃ、駄目だろ、先生。

俺とこうなって、色々後悔やら反省やら、とにかく教え子とデキるのってそんなにネガティブに考えなきゃなんねー事なのかよ。




「ナ、ナルト…?」



過呼吸か、ってくらいの速い息の途中で、かすれた色っぽい先生の声が聞こえた。
口を薄く開いて、のけぞったまま、俺の顔を覗き込んでる。


「何…泣いてるのよ…お前……」

そう聞かれて初めて俺は自分がぼろぼろとみっともなく泣きだしてるのに気付いた。

有りえねぇ!!まったくもってありえねぇ!!なんで泣いてんだってば俺!?

「ヒトのイチモツ握りしめて…泣くんじゃないよ……ちょっと、じっとして、ろ、お前…」

ヤってると、呼吸が上がったまんま話せないからだろう、先生に言われるまんま、だらだらナミダを流す先生のソコから手を離すと、後ろざまに先生を抱きしめて、肩に額をくっつけた。



「俺の早食いがそんなに…気になるの、お前…?…変な奴。」
「……」
「健康がどうとかいうけど…な、お前のラーメンマニアの方がずっとやばいでしょうよ。」
「だって。先生。」
「………でかい男が”だって”とか言うな!」
「……言い方なんかで突っ込むなよ先生……先生の早食いって…なんか見てると俺、寂しくなっちまうんだって……」
「…突っ込んでるのはお前だろ!と、とにかく、一旦…抜け、コレ…」
カカシ先生はそう言って俺の膝の上から起き上がろうとするけど、俺は肩口を抱きしめて離さない。
「…ちょ、あ…ナル…ん…」
「じっとしてたらいいだろ…?抜いたらまた入れる時大変だってばよ、先生…」
そう言ったら先生は呆れた顔で俺を振り返った。
ん?俺ってなんか変なこと言った?まさか話し合いにもってってこれでおしまいにするつもりだったんかな?
冗談じゃねぇ。
─まだヤルつもりか、
とか、
─勝手なことばっかりしやがって、
とか、先生は暫くぶつぶつ言ってたが、一つため息をつくと、くたっと体の力を抜いて、俺の胸にもたれかかった。


「…一人っきりの食事が苦手なんだよ。」


それは唐突な言葉で、俺はとっさに返事ができなかった。

「だから、早く済ませたくて…お前と一緒にいる時まで…ついつい早食いになってる…んだと思う…
お前は物心ついたときからずっとたった独りで飯を食ってて…
それなのに…お前が…我慢してるのに…俺が苦手だなんて…みっともない事…言わせるなよ……」



そう言って先生はうつむいてしまう。






他に人がいないところに独りでいるのは苦にならないのに。

たくさんの人の中で、独りでいるのは辛い。





先生も…そんなだった?




─任務の帰り道。暗い夜道を報告書片手に、里の裏通りを駆けながら、家々にともる明りや、家族のにぎわう影を見ながら……誰もいない部屋に戻っていった…?





「……でも、そうだな。もう、がっついて…急いで食う必要、ないんだな。」
「………先生…」
「…お前がいたんだよね。…たとえ留守だって、待ってたら、お前が帰ってくるんだった。」
「………」
「…俺も、お前と一緒で……家族、とか、そんなのに、縁がないから……つい、な。」

そう言って、先生は後ろざまに俺の頬を、グローブをはめたまんまの手でそっとなでた。







恋人同士、とか、好き、だとか。
そんな言葉ではなくて。




俺たちは家族だ、と、先生が言ってくれた、この日。


本人はすっかり忘れていた、…先生の誕生日。




この日は、先生の誕生日だってだけじゃなくて。
いつも遠くを見ながら…独りで歩いていた先生が、俺の家族になった、俺にとっても、大事な記念日になった………





◇◆◇





結局……。


先生の舌の怪我は結構重くて、綱手のばあちゃんにこってり油をしぼられた……。
俺が。

なんで俺が…!!?なんで俺がおこられるんだってば!?



おまけに。
ばあちゃんの診療室から出てきた先生が微妙に赤い顔をして、口布の上から口を押さえてるし、ばあちゃんはにんまり笑って舌舐めずりしてたし…

物凄く気になってしょうがねぇっ!



勿論、それから随分長い間、火影命令でカカシ先生とのキスが禁止されたのはいうまでもない。