七夕語り
─5万打切りリク─

◇◆◇03話◇◆◇




「どうだった、ナルト?」

キバの家の地下室、ナルトのオリジナルは、影分身の送ってきた連絡をみて苦い顔をしていた。

「やっぱりダンゾウの野郎、任務明けの先生を休ませもしねぇでSランクを入れてやがった。」

「親父の言ってた事はホントだったな…。」

シカマルが渋い顔をしながら首を振った。

「シカクのおっちゃんが…?」
「ああ。ダンゾウはカカシ先生を合法的に死なせるつもりだってな。」

キリッとナルトが歯を軋らせる。

「お前がカカシ先生と『親しすぎる』のがきにくわねぇんだよ。」
シカマルがそう低く言うと、
「ダンゾウは、写輪眼でカカシ先生がお前をコントロールしてクーデターでも起こすと信じてるんだろうな。」
ネジがため息をつきながら言った。

ナルトは肩をすくめた。

「俺が手を貸さなくったってカカシ先生はやろうと思えばいつだってダンゾウを殺せるぜ…?」

まさか、といった顔でシカマルとキバがナルトを見る。

「……それだけ先生の万華鏡写輪眼ってのはすごいんだよ。」

チョウジがポテトチップの袋に突っ込んだ手を止めていった。

「一発、確実にねらったら、火影屋敷ごと…全部一度に始末してしまえるよ。先生なら。」
「ああ。俺も我愛羅救出任務の時一度…」
ネジが頷く。
「おい、それは、ダンゾウ一派には知られてないだろうな?」

カカシの万華鏡写輪眼の話を聞いたシカマルが顔色を変えた。


「ねぇ。シカマル。なんでダンゾウはカカシ先生に辛く当るのかな。」
チョウジがポテトチップの袋を見下ろしてぽつり、といった。
誰もが思っていることだった。
自分たちにとって、カカシという上忍師は暖かく、頼りになる…かっこいい大人だった。
自分たち自身でも、青臭いと思う理想を笑って認めてくれ、その実現におしみなく力を貸してくれる。
シカマルやチョウジたちは、カカシがいなければアスマの敵打ちさえ無事に成し遂げられなかっただろう。
「嫉妬さ。」
「………?」
「お前、ダンゾウとカカシ先生、どっちが好きだ?」
「…そんなの聞かなくても分かり切ってる事でしょ?ダンゾウがカカシ先生より上なのは歳だけなんじゃないの?」
「…それと、後ろ暗い根回しも、ダンゾウが上だな。」
壁にもたれたキバがぼそっと言った。
「カカシ先生はやろうと思ったらえげつない手でも打てるぜ。根回しだってな。でも俺たちにそんなこと覚えて欲しくねぇからやらねぇんだ」
ナルトが苦笑しながら言った。
何度もツーマンセルの仕事をこなすうち、単純な力技ではこの人に勝てない、と、しみじみと思ったものだ。
「…でも…カカシ先生は里のために…ボクを逃がすために、チャクラ使い切れる…人なんだよ?自分は死んじゃうのに…。」

「それがダンゾウには分からないんだよ。人の為に死ねる人間がいるなんて、信じられないんだよ。」
シカマルの言葉に、チョウジは頷いた。
「里の為に命を懸けるって…口で言うのは簡単だ、そんなことできる人なんているのかなって思ってたけど…。」
そういって言葉を切ったチョウジをその場にいたみんなはじっと見つめた。

カカシが一度、命を落とした、その顛末を、チョウジだけが見ていたのだ。

本当に、何かの為に命がけで戦う、という事を…その眼で…。

何かを振り払うようにチョウジは顔をあげた。

「だから、ボクだってカカシ先生やアスマ先生みたいな大人になりたいと思う…」

「そうだな…カカシ先生は自分の行動で俺たちに教えてくれる。俺はあの人たちを理解出来る自分が誇らしいと思う。」

ネジのその言葉に、その場にいた若者たちは一様に頷いた。




◇◆◇





「それで…お前らさ。俺んちに集まったのはそんな深刻な相談するためだったんだ…?ナルト、もう、あの話はいいのか…?」

ナルトは少し体裁悪そうに苦笑した。


「お前は…」

シカマルがゆっくり立ち上がりながら眉間にしわを寄せて、いった。

「そんなカッコイイカカシ先生に犬耳やら尻尾やらをつけて、本心を見せて欲しい、甘えて欲しい、てんだな?本気かよ?」

「おいおい、シカマル、なにいってんだ、カカシ先生にそんなもんつけてどうすんだよ。キモイこというんじゃねぇよ。カカシ先生にも失礼だろうがよ」

ナルトはくっくっとのどの奥で笑っている。

「キバ君。驚かないで聞いてくれよ。ナルトは間違いなく、カカシ先生に犬耳やら尻尾やらをつけて自分に甘えて欲しいんだよ」

「………????恋人に付けたいんじゃなかったのかよ?年上で美人の…?」
「…年上の恋人に付けたいんだよ。ナルトは。」

シカマルは微妙に一つ形容詞を省いたが、キバは今一つ分からなかったらしい。
「だからカカシ先生に……」
「…へ?」
「いい加減に分かれよキバ!!!俺だって言いにくいんだよ!!」
察しの悪いキバにさすがにシカマルがキレる。

「カカシ先生に付けたい=年上の恋人に付けたい=カカシ先生が年上の恋人、って事だな」
あきらめたネジが単刀直入に説明してやると…

「……………………………マジ?……………………………?」

なぜかキバは声を低めて小さく聞いてきた。
ナルトは笑いながら、
「おぅ!やっと、おととしだったかな、口説き落としたんだってばよ。俺ってば焦った焦った。いつまでたっても子供扱いだから、18は子供じゃねぇって強引に押したお………うぐ…!」

「ナルトくん、具体的な描写は勘弁してくれ。俺たちはカッコイイカカシ先生像をくずしたくねぇんだ」

後ろから回ったシカマルが、ナルトの口をふさいで恫喝した。

が……

違う爆弾が想いもよらぬ方向から落とされた。

「ボク、ナルトがカカシ先生を美人だって言うの、分かるな。先生、ホントに…ハンサムっていうより美人って感じだもん。」

「「「「なんだと」」」」

そこにいた若者たちの声が見事にそろったが、勿論ニュアンスはそれぞれ微妙に違う。


後ろにシカマルを引きずったまま、ナルトがチョウジの胸倉をつかみ上げた。

「チョウジってばお前、いいいい、いつカカシ先生の顔、見たんだってばよ!!」

締めあげられたチョウジは、しかし焦る風でもなく言った。

「あの時。父ちゃんがカカシ先生の息を確かめるのに…」


チョウジのその静かな声に、周りは黙りこんだ。

「冷たくなったカカシ先生なんて、二度と見たくないよ。犬の耳とか尻尾とかつけて、素直にナルトに甘えて先生が幸せになるんだったらボクなんでも協力するからね、ナルト。犬耳だろうと尻尾だろうとカカシ先生はカカシ先生なんだし。」

「チョウジいいいい!!おめぇってばなんていいやつなんだってばよーーーーー!!」

がばっとナルトに抱きつかれたチョウジは、

「うわ、ナルト、ポテチがつぶれるって!〜〜」

と悲鳴を上げた。




シカマルとネジは………とにかくこの破天荒なカップルを幸せにするべく、尽力するのが当面の自分たちの使命だ、と頷きあった……







続く…



















Update 2009/08/08