◇◆◇前篇◇◆◇
─素直な尻尾 2 カカシver.(オトナルカカ)─
─先生…オレのコト、好き…?
分かり切ったことを尋ねる。
何度も何度も。
あたりまえでしょうよ。
でなければ誰が…こんな。
こんな…!
言葉にしない思い。
言葉にできない思い。
分かってほしいというのは我儘で……。
でもオレは我儘を言う。
お前に甘えて、子供のように。
言わなくても分かれよ。
オレの気持ちくらい…分かりなさいよ………
と。
◇◆◇
ナルトが不安がるのは多分、自分のせいだろう。
それはカカシには十分に分かってはいた。
分かってはいたのだ。
だが、生まれた時から知っている…可愛がってきた、大切に思ってきた、幸せを願ってきた少年と…
─こ、こんなことになっちゃって…
決して後悔しているとか、悔やんでいるとか、そんなのでは決してないが、戸惑うのも致し方ないのだ。
何時死んでもかまわない、そんな生き方をしたつもりは無かったが、「
「
─…あいつ、今日は多分…まっすぐ帰ってくるだろうな……いや待てよ、やっぱりダチにさらわれて…飲んでくるかな…?
カカシは台所で器用に包丁を使いながらまだぐるぐる考えていた。
写輪眼を使ってコピーした技はなにも戦闘用のものだけではない。
わざわざ外食に出なくても、家で旨いものが作れるのならそれに越したことは無い、と、とにかく何でも役に立ちそうな技術はみんなコピーするのが癖になっているカカシは、一流ホテルのシェフが務まるような料理のレシピをコピーしてしまっているし、元来天才的に器用に生まれついている。
…忍びを辞めても食うには困らないよね…オレって。
器用貧乏が忍服を着ているようなものだったが、今回に限って言えばそれはとても役に立った。
テーブルに並べられた豪華な晩餐は、いくら食べざかりのオトコ、といっても二人分にしては量が多かったが、味見をした限りでは十分満足のいくものだ。
─すっげー先生!!うまそーだってばよっ!!
大喜びするナルトを思い浮かべると、自然と…
ケツの尻尾が邪魔っ!!
パタパタと尻を叩いて尻尾が振られ、鬱陶しい事この上ない。
ったく何なんなのよもう…!
期待してるってコト?
ナルトとがっつり…その。
なんだ。
誕生日のプレゼントは、オ・レ!
みたいな…?
うわあああ
冗談じゃないって、止めて!
いったいいくつだと思ってんのよオレ…!!
10代の女の子でもあるまし…
おっさんのやることじゃないでしょうよ。
……ナルトは…喜びそうだけど…
いやいやいや、違う違う、客観的に考えてそれって「キモイ」ってやつだって…!!
自分で自分に突っ込みを入れながら、それでも料理が出来上がったら並べるしかなく…
並べ終わってもナルトはまだ帰ってこない。
頭の上では大きな耳がピクピク落ち着きなくあちこちの音を拾おうとするし、尻ではでかい尻尾がパタンパタンと座ったソファを叩いている。
………手持無沙汰だ………
……風呂はいってこよ…
落ち着いて考えれば何の準備だ、という事だが、幸いにも、あんまりナルトの帰りまでの時間がありすぎて、考えすぎていたカカシは、そこのところは深く考えずに、さっぱりしたいという単純な理由で先に風呂に入ることにした。
のんびりのんびりと風呂に入っても、まだナルトは帰ってこなかった。
時間でいえば、まだ7時前、そんなに遅いわけではないのだが、昼間っからずっとぐるぐるしっぱなしのカカシは大概考え疲れていた。
…っ…もーいいや、先に飲んでやれ。
誕生日に乾杯などとしゃれたことでもと、考えないではなかったのだが、
どーせ同期の奴らと一杯ひっかけてくるんだろうし…
…ここまで遅くなっているんだから…(と、カカシが考えるほど遅い時間ではないのだが)先に飲んでやる…!
とばかりに、普段はめったに飲まないシャンパンだの、甘口のワインだのに手をつけ始めた。
後で思い返せば、それが敗因。
ナルトのこと、ダンゾウとのいざこざや、綱手の体調、色々な事を考えすぎて…
つい飲みすぎた。
◇◆◇
体が熱い。
熱を持ってきているのにカカシは気付いた。
窓。開けた方がいいかな…熱いよちょっと…ん…んあ…?
乳首の先にツキンとしびれが走り、カカシは眼を開く。
…あ、オレ、寝ちゃって……
「……な……!!!???」
自分の置かれている状態にぎょっとして、カカシは思わず凍りついた。
アンダーは大きくたくし上げられ、スウェットのジッパーは全開、でかい手指が乳首をつまんでこねてきている。
「あ…センセ、目が覚めた…?」
耳元でナルトの低い声がそっと囁いてきた。
「センセ、遅くなってごめん。いちいち飲み会の誘い断るのが面倒で遠回りして帰ってきたんで遅くなっちまったんだってばよ。」
「んん…っ」
返事をしようにも、ナルトが背後から抱え込んで首筋を舐め上げてくるものだからきちんとした声が出ない。
猛抗議しようとした…とたんに、尻の下に敷かれていた尻尾が盛大にバタバタと大きくソファのカバーを叩いて…
「嬉しい」と表現しだした。
………!!!
ぎょっとしたのはカカシ、笑み崩れたのはナルト。
「…今日は一日先生のことばっか考えてたってばよ」
先生も、そんな感じだったみてぇで俺ってば嬉しい、そう言いながらてナルトの手が、落ち着きなく、パタパタソファを叩く尻尾を優しく握ってきた。
「…あっ…」
とたんに、クライマックスに近い熱が腰の奥にともる。
体をよじって逃れようとするが、アルコールの回った体は、リーチの長いナルトの両腕にからめ捕られて身動きもできなかった。
パタンパタンパタンパタン!!
引き下ろされかけたスウェットから覗く丸い臀部の上の、見事な尾。
餌をねだる飼い犬もかくや、という具合にぶんぶんと振られている。
カカシはアルコールの回った頭を抱えた。
隠しようがない…
ましてや格好の付けようなどあるはずがない。
ナルトが欲しくてたまらない、と、あからさまな自分の体にカカシは思わず涙目になってしまう。
恐る恐る、意地悪く笑っているだろう背にいるナルトをゆっくりと振り仰いだ。
─……!
どんなに意地をはっても、やっぱり自分の事が欲しいんじゃないか、と、勝ち誇ってると思った年下のカワイイ男は……
幸せだ、と。
うれしい、と。
カカシの眼に映ったのは、笑み崩れた若者の至福の表情………!
自分を欲しがってもらえてこんなに幸せに思っている、と…
野性的なオトコマエが台無しになりそうなくらいの全開の笑顔…!
自分がこいつを欲しがることが、こいつにこんな表情をさせられるのだ。
こいつはなんて簡単な奴なんだ……
なんだよお前、お手軽すぎるぞ……
オレが欲しがったくらいで…お前…そんなに喜ぶなって……!
「ああああ、もう、わかったよ!分かりました、オレの負け!」
自分のこだわりが、少しもナルトを幸せにしないことにようやく気付いたカカシは、ナルトの熱烈ラブコールにやっと正面から向き合うことにしたのだった。
続
Update 2009/12/05