聖夜の贈り物
〜十万打切りリク〜
カカシ先生〜〜メリクリだってばよーー!!
賑やかな声とともに目の前に差し出された、リボンのかかった包みが3つ。
「???なに、めりくり?ってナニ?」
「メリークリスマスの事よ、カカシ先生!!」
ピンク色の髪の少女が、そんなこと知らなかったの、と、笑いながらカカシに教えてくれる。
「ほーら、サスケ、カカシ先生も知らなかったってばよっ!」
「…うるせぇ、ドベ。カカシはオッサンだから知らなくていいんだ!」
おっさんって…サスケ……俺、まだ26ですケド…
「そうよ、そうよ、ナルト、あんたが知らないのは変なのよっ!」
大騒ぎし始めた3人をよそに、カカシは片方だけの眼を細めて手のひらに乗せられた包みを見ていた。
そっか…。
俺も生徒にもらうようになっちゃったんだな…
◇◆◇
「ねえ、カカシ、オビト、クリスマス、先生に何か三人でプレゼントしない…?」
リンがそういいだしたのは、師走もおしせまったころだった。
「オレはクリスチャンじゃないし、先生もちがうだろ…?」
そんなことを言って否定的なカカシに、
「ばっかじゃねーの、クリスマスと宗教は関係ないだろーが!」
とオビトが噛みつく。
「……馬鹿はお前だ。クリスマスは聖誕祭っていってキリストの誕生日の事だ!だから無宗教の俺たちが騒ぐのは変なんだ!」
正論で反論され、オビトは真っ赤になった。
「や、やかましい、りくつなんかどーでもいいんだよ、そんな屁理屈なんか!」
「屁理屈言ってるのはオマエだ!」
「ま、まぁまぁ、カカシもオビトも、けんかしないでさぁ…!あ、あのね、あのね、」
今にも歯をむき出して噛みつきあうんじゃないか、という二人の間に入って、必死で止めようとするが…
………………
「それで…?喧嘩を止めようとしてくれたリンに、怪我させちゃったわけ…?いったい何をもめてたの…?」
腕を組んで、表情を消した師の真っ青な目がじっと二人を見下ろしている。
オビトは、先生が本気で怒ってる、と思い、なんとか謝ろうとするが、相手を悪く言ってしまうのは男らしくない、と、唇をかんだ。
カカシが素直に先生にプレゼントするってリンの案にのったらこんなことにならなかったのに…。
せっかくリンが。
リンが。
…そのリンに怪我をさせちまって…。
「スミマセン、先生、俺が、リンのせっかくの提案を面倒くさがっていやがったんで、こいつと喧嘩になりました。」
隣のカカシがそう言い、オビトはえっという顔でふりかえった。
「せっかくの提案…?」
「はい、親睦を深めるための、だったみたいなんですけど…」
そうなの?と視線を向けられて、オビトはびっくりしたが、
「あ、いえ、俺も、いい案だとおもった話に反対するんでちょっとカカシに突っかかってしまって…冷静に話せばよかったんですけど…」
素直に自分の非を認めたオビトに、隣のカカシがちょっとびっくりしたような目を向けたのが視界に入って…オビトは何故かちょっと気持ちがよかった。
─俺だって…何もむやみやたらと…お前に喧嘩売りたいわけじゃないんだよ…!
…俺だって…仲良く…なりたいって…
三人の間に一瞬の沈黙が下りた時、
「先生っ!!」
澄んだ声が医務室のカーテン越しに聞こえ、すぐに、片手に包帯を巻いたリンが現れた。
「ごめんなさい、先生、違うんです、ワタシがとろかったから、自分で怪我したみたいなもんなんです、二人は悪くないんです!」
叱られているであろうチームメートを心配する少女に、彼らの上忍師は極上の笑顔を向けた。
「おや、いいチームワークが出来てるね!三人とも!」
そう言ってひとまとめに抱え寄せる。
わあ、と腕の中で騒ぐ子供たちを、満足げに見下ろしていた金髪の上忍師は、
「そーだ、クリスマスも近いことだし、任務が入ったら、のんびりお祝いってわけにいかないから、今のうちに、なんかしとこうか?」
その師の科白を聞いた三人の子供たちのびっくり顔と、クスクス笑いの意味は上忍師にはわからなかったが…
「一楽でラーメンおごってあげる!」
そう高らかに宣言した師に、けちーーと叫んだのはだれだったか。
大騒ぎで、ラーメン屋に繰り出し…
暖かい湯気を顎に当て……肘がぶつかる距離での暖かい食事。
今でも思い出す、彼らの体温……
◇◆◇
「先生っ!カカシ先生ってば!」
「…そっか〜メリクリっていうんだ〜」
しみじみとつぶやくカカシに子供たちは怪訝な顔をしつつも…何かを期待して、眼がきらきらと輝いている。
「ありがとなーーーんなら、お礼に一楽でラーメンをおごってやるよ!」
そう言った時の三者三様の反応…!
「ええっ!先生、ケチっ!」
「やったぁ!ラーメンラーメン!!」
「クリスマスにラーメンって、なんだそのチョイス!」
カカシは笑いながら、子供たちを抱え寄せる。
「まぁまぁ!くっついてラーメン食うのもいいもんだぞーー」
わあ、止めろ、と腕の中で騒ぐ子供たちの暖かい体…!
嘗て、自分の師がしてくれたように。
嘗て、自分が味わったように。
ささやかで…穏やかな聖夜を…
メリークリスマス…!
end
Update 2009/12/24
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