もっと特別なことだと思っていたんだ
後篇
「っテンゾ…!おま、ちょ…っ!いきなりするか!?って、おま…え、チャクラっ!」
はぎ取るようにズボンを下着ごと脱がせてしまうと、カカシはきざしてしまっている部分を恥じるようにうつ伏せに体をよじる。
これ幸いと無防備に晒された後部に指を差し入れた。
「……っテンっ!!」
「…欲しいです、先輩、我慢できません…!」
「…待て、待てって、テンゾウ、誰か、来たらどうすんだ!」
密室にすればOKだという事だろうかと、なけなしのチャクラを練りこんで、病室のドアを木遁で封じる。
「……テンゾ…おま…っ!」
「邪魔ははいらないです、続き、しましょう先輩!」
「…っ…!!」
何の準備もないし、お互い体力もぎりぎり上等なのだが、テンゾウはどうしても、今この…腕の中の大事な人を自分の体で確かめたかった。
久々にチャクラを練ったせいか軽い頭痛とめまいがする。しかしそれはチャクラを練ったせいか、目の前の男にイカレているせいか…
カカシが何か言っているようだったが、テンゾウの耳には入らない。
硬く立ち上がるソコを握りしめるようにつかむと、後ろに指を差し入れようとした、とたん、風邪を切る音とともに…
がつん、と、強烈なひじ打ちが…傷口の上に、きまった……
「…………っ!!!!せ、んぱ……」
「待てって言ってる、…テン…ゾ?、おまえっ!?」
ひじ打ちを決めた方が真っ青になっていた。
いつもならこのくらい、簡単に防ぐ後輩が、見事に横っ腹の傷口の上に食らってしまっていた。
もともと動きが極端に落ちていたのだ。
普段でも、気を張っていないとカカシの攻撃を受け止めるのは至難の業なのに。
カカシの方はガードされるのを見越して…手加減がない。
「う…先輩…ひどい…」
「もろに食らうやつがあるかっ!そ、そんな体調で、や、やれるわけ…テン、だ、大丈夫か…!?」
硬く巻いた腹の包帯が紅くにじみ始めていた。
「動け…なくなっちゃいましたよ、どうするんですか……」
「す、すまん」
申し訳なさそうに脇腹に手のひらを当て、
「綱手様を呼ぼう…!」
そう体を離そうとするカカシの腕をつかむと、テンゾウはその手を自分の体の別の場所に導いた。
「大丈夫じゃ…無いのはこっちです…」
元気いっぱいに自己主張しているその部分に手を持って行かれたカカシは、息をつめて固まってしまった。
「……そ、んなにヤリたいの…お前…?」
「…ヤリたいです、ものすごく…!」
恥じらう余裕すらなく、腰の引けているカカシの目を覗き込んでテンゾウは堂々と言いきった。
「なのに…動くと…イタイです…」
声が半泣きになって情けない、とは思うものの、今更カカシ相手に格好つけてもしょうがないテンゾウは、アプローチもど真ん中だ。
未だにためらっているカカシに…そのためらいは、こんな場所で、というものから、けが人相手に、というものにかわってきているようだったが、…
押しの一手を決め込んだテンゾウは、更に木遁のチャクラを練る。
「あっ、こら、テンゾウ、もうチャクラ使うなよっ!」
「……相手してくれますか…?」
「……う…」
踏ん切りのつきかねているカカシに、彼とて嫌だというわけではない、と見てとると、返事を待たずにぱん、と手を打ち鳴らした。
わっ
と、情けない声を上げたのはカカシである。
ベッドの木の枠から、しゅるしゅると起ちあがってきたのは特製の蔦。
柔らかい和毛に覆われたそれが、瞬く間にカカシの体を拘束していく。
結構常識的なモラルを持ってるこの人と、ちょっと変わったシチュエーションで事に及ぼうと思ったら、「拒めなかった」というエクスキューズを与えておかなければならないのはすでに経験済み。
怪我をしてる僕にこんなに拘束されたら、下手に抵抗できないでしょう、先輩?
そう耳元で低く囁いてやれば、この〜〜〜とうるんだ眼がねめつけてきた。
「後で覚えてろよ!コノ〜〜ヤラシイ後輩っ!!」
そう言いながら、拘束された両腕の輪の中にテンゾウの頭を入れ、体を寄せてきた。
◇◆◇
そう、ゆっくり…体を落としてください…あせらないで…
カカシは言われるままに、額をテンゾウの首筋につけ、眼を閉じてテンゾウが導くままにゆっくりと腰を落としていく。
うう…
耳元でカカシがもらす声が、さらにテンゾウを煽っていた。
「おま…でかい…って!も、ちょっと、小さくしろっ!」
無茶な注文をしながら、それでもこちらの望み通り、息をつめながら体の中にテンゾウのいきり立ったものを飲み込んでいく。
「…先輩…大丈夫ですか…?」
「だいじょ…うぶなわけあるかっ!でかいんだよ、お前っ!何、いつもの三割増しですってでかさっ!お前こんなとこでスルのか好きなのかっ!」
てれ隠しだと丸わかりの早口でカカシに文句をつけられた後輩は、上気した先輩の貌をしっかり覗き込み、
「先輩とスルのはいつでもどこでも大好きです…」
「…………!!!!」
開き直った後輩ほどコワイモノはないかもしれない…
背中を抱え込まれ、動いて下さい、あなたのいいように…とささやかれ。
「……っくそ、お前、ホントに治ったら覚えとけよっ!」
そんな憎まれ口をきいて、カカシが小さく声を飲み込みながらゆっくりと腰を動かし始めた。
◇◆◇
拘束された手で、テンゾウの後ろ髪をつかみ締め、カカシがこすりつけるように腰を動かす。その仇めいたしぐさに、煽られたようにテンゾウは汗でうなじに張りついた銀髪を唇でよけながら、舌で白い肌をたどった。
それだけでも息を詰めるカカシが………
愛しい、という感情が、どんなものか。
胸に迫る、この熱い塊、これを言うのだろうか。
ひたすら、無垢なる情熱をもって、自分の快感を追う、この人が。
天というものが…
ありとあらゆる人生の苦難と引き換えに、今、この人を自分のそばに配してくれたというのなら、かつて味わった辛酸さえ、是、と受け入れることができる。
「あ、ん、ん…テンゾ…、も、もう、あ…」
平らに切った、カカシの爪が、男の力でテンゾウの肩に食い込む。
その痛みさえ、どれほど幸せか…!
いつの間にか、テンゾウは、カカシの両手を頭の上に拘束して、上に乗りかかったまま、夢中になって腰を使っていた。
はっ、はっ、と、短い呼吸の中、カカシがしきりとテンゾウの脇腹の傷、出血を気にしていたが、テンゾウに揺すぶられるまま、もう、かすれた声しかもれなくなっている。
頭の芯に、快感とは別の緊迫感がうまれ、失神の前触れだと気付いたテンゾウはとにかくカカシを終わらせようとお互いの腹に挟まれたカカシのモノをつかんでこすり上げ始めた。
「ぅあ、テ…ンゾ…も、も、でない…って、触るなよ、も、無理…」
「これでおしまいですから…もう少し…」
お前のもう少しは世間の一般常識から離れてるぞ!と、わめくカカシの声を最後まで聞けたかどうか…
腰の奥の膨大な熱を、大事な人の体内に、絞り出すように放つと、そのまま、テンゾウの視界が暗転していった。
………
◇◆◇
体の上で、カカシを激しく揺すぶっていた男は、う、と低く呻いた後、体重をかけてきたまま、動かなくなった。
腰の中心に熱い塊を叩きつけるように放たれて、カカシもつられるように頂点に駆け上った。
そのまま、失神したのか、眠ったのか。
疲労感と解放感に全身をからめとられ、カカシが眼を覚ました時、まだテンゾウの下になったまま…
「………!!!」
体の奥に、まだテンゾウを感じる、というより。
wwwwwこ、こいつ、突っ込んだまんまで寝やがったなっ!!
張り倒そうとして、初めて、自分の両手両足が拘束されたまんまであることに気付いた。
普通の蔦ではない。
テンゾウの「愛情(執念?)」のこもった木遁性の蔦だ。
─き、切れない…!!
体の奥に、後輩の脈動を感じ、耳元で健やかな後輩の寝息を…
健やか…?
待て。待て待て!!
呼吸が細いぞっ!!
両手両足を大きく開いて拘束されたまま、おまけに後輩を上に乗せたままで、カカシは強靭な腹筋で上体を起こして…
「うわっ!!!」
ベッド周りの惨状に呆然とした。
行為の痕跡にまみれているのは…まあ、仕方がない、予測の範囲だったのだが、カカシをあわてさせたのは彼の体の上で動かないテンゾウの横っ腹からの出血で…
シーツは真っ赤なだんだら模様に染まっていた。
「テンゾウ、テン、お、起きろ、大丈夫かっ!?…テンっ!!」
耳元で叫んでも一向に目を覚ます気配もなく、これは寝ているのではなく、失神しているのだと、さすがのカカシも気がついた。
失神していてもさすがというか、扉の封印と、カカシを拘束した木遁はびくともしていない。
とりあえず、こんな姿を他人に見られる心配は…ない、のだが。
このままでは後輩が失血死の危険性がある。
木遁の封印はカカシの忍犬の出入りを拒まない。
綱手のところまで、パックンを走らせれば、後輩を助けられるが。
こ、この格好のまま、綱手様を呼ぶ…?じょ、冗談だろ……!!
恥ずかしいのではない…。「恥ずかしい」のではなくて……
「恐ろしい」のだ……!!!
「テンゾウ!!起きろって!頼むから目を覚ませーーーーーっ!!!」
自分をしっかり抱きしめたままピクリとも動かない厄介な後輩の下敷きのまま、カカシはめったになく…進退窮まった………
◇◆◇
カカシがどうやってその窮地を逃れたのか、は、誰も知らない……
終…!
Update 2009.10.24
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