腹ペコカカシとお代わりテンゾウ


その日、長期任務から、漸く帰還したカカシとテンゾウは、深夜ではあったが、血臭をまとったまま、戦場の余韻を残した姿で火影屋敷に任務報告に訪れた。


「ん、ご苦労。」

目の下に隈をつくっていた綱手は、それでも無事に帰還した二人にホッとしたようで、書類の確認は後でするから、とっとと風呂に入って寝ろ、と片手をひらひらと振った。

そのそっけない素振りに、照れ屋な火影の気遣いを感じた二人は一礼して部屋に戻った。




どろどろに汚れている二人は、眠いし腹は減ってるし、くたくただったが、とにかく、


「ふ、ふろ…風呂に入って…飯…」

二人はよろよろしながら支度を始めた。




まっとうな食事…火の通った…は何週間ぶりか…

先に風呂に入ったカカシが台所で簡単に握り飯を握っていると、後から出てきたテンゾウが、パジャマ姿のカカシを後から抱きしめた。

「先輩、服、着ちゃったんですか…?」
「…素っ裸で飯をつくる趣味はないよ、俺は…」

白く、指の長い手が、器用に三角の形を作っていく。

「どうせ直ぐ脱ぐのに…」
「…ちょ…触るのよせよ…俺は腹が減ってるんだって…!」
「ボクも腹が減ってます。辛抱たまりません…!!」
「そっちじゃないでしょ…って、こらケダモノかお前は!」
「まあ、まあ、いいじゃないですか、先輩…!」

……

「ホドホドにな…!」

「……え…?」
隣から聞こえた声に、テンゾウは慌てて振り返る。

か、影分身……

握り飯を二つ掴んで、ゆっくりリビングへ向かうカカシが、がっくり座り込んだテンゾウに背を向けたまま言った。

「俺はね、腹が減ってるの。も、風呂入ったら、握り飯をあったかい内にたべるぞ〜〜っていうモチベーションで里まで帰ったわけよ。お前に『食われて』たら握り飯が冷えちゃうでしょ。」

「………先輩、冷たいですよ……」
「だから、冷えるから握り飯は早く食わないとな!」
にっこり笑うにくったらしい恋人に、年下の青年は、あーそうですか、と、立ち上がった。

なんだか含みがありそうなその声に、カカシがおにぎりを咥えたまま振り返ると。


あまり見たことのない、ちょっと意地の悪そうな笑顔を浮かべてテンゾウは、握り飯を握り続ける影分身の方のカカシをひょいと抱き上げた。

「ちょっと、なに…!?」

抱き上げた影分身の口を、自分の口で塞いだテンゾウは、カカシ本人の前を影分身を姫抱きしたまま通り過ぎ、ソファの上に下ろすとそのまま覆いかぶさった。

「………!!」


「…!!おま…何する気!!」

おいおいと慌てる影分身の方のカカシを優しく見下ろして、テンゾウは本体のカカシを振り向きもせずに、食事です、といった。

「………!!」


影分身のカカシは握り飯を握っていたせいで、両手はご飯粒だらけのまんま、握ったばかりのおにぎりを持っている。
テンゾウを止めようにも手の塞がった形で、びっくり、目を見開いたまま、パジャマを脱がせていくテンゾウのなすがままだ。


ふん、と意地をはった…カカシ本人は、ソファに背をむけて、食事を続けることにした。


そして、幾ばくか…

「あ…っう!!」

とんでもない…「自分の」声が後から聞こえてきて、びっくりしたカカシは思わず振り返ってしまった。


……!!……………!!!!!!!!!!!!!……!!



指についたご飯粒をなめとっていた、その格好のまま、カカシは耳まで真っ赤になった。



「テ、テンゾ…あ…んんっ!!」


ソファに腰を下ろしてパジャマのズボンと下着をずらしただけのテンゾウのひざの上に、全裸の「自分」が
おにぎりを…すでに形のぐちゃぐちゃな…握りしめたまま、仰け反って…

こちらに向かって大きく足を広げられている……!


「な、ナ、ナ、ナニやってんだ、テンゾウ!!」

さすがに声を上ずらせて「自分の」エロい格好から目を逸らせてテンゾウに抗議したカカシだったが、

「食事です!暖かい内に…!湯上りほかほかのカカシさんをいただいてます!」

少し呼吸をあらげたまま答えた恋人にカカシは絶句した。


カカシは心の底から後悔した。
こんな所に自分の高いスキルを発揮する必要がどこにあったんだ………!!
影分身の自分は殆ど同じ自分だ。

勿論、今までも、”そっちの方”の任務を影分身で済ませたこともある。相手には本物とは区別付かないのは、カカシの影分身のレベルの高さゆえだ。


しかしこの場合……なんでただの変わり身にしておかなかったのか…!

「あ、あ、あ、テンゾウ、も……あ、イク……!!」

その「自分」の声に思わず振り返ってしまったカカシは、股間の硬くなったのものを擦り上げられ、突き上げられて、悲鳴のような声を上げて、テンゾウの首筋に仰け反った「自分」と直面することになってしまった。


「だあああああ!!!止めろ、テンゾウ!!!」


カカシは慌てて……


…影分身を解いてしまった……

「あ、せんぱ……」

………!!!っつ、うう、あっ!!……!!


当然…つい最前まで、影分身が経験していたことは本体に還元される。


急激に体を襲う射精感にカカシは思わずひざを付いていた。

テンゾウの方も、自分を包んでくれていた「恋人」が急に消え、頂点寸前で放り出された形だ。


「テ、テンゾ……」


ひざを付いて、こちらを振り返るカカシの声は切羽詰った情動に潤んで、どんな意地悪を言われてもあえて逆らうまい、という決心が垣間見えた。

それほど、いきなり来た衝動は大きかったらしい。

「こっち、来れますか…?」
そういって苦笑したテンゾウがソファから手を伸ばすと、ん、と返事をしたまま、にじり寄ってくる。
そのまま、パジャマのズボンを脱ぎ落としてテンゾウの膝にまたがろうとするカカシを、テンゾウが腰を掴んで止めた。

「慣らさないと、駄目ですよ、カカシ先輩…!」
「……な……!!そんなの…!」
「先輩の方は慣らしていませんて。消えてしまった方の先輩はたっぷり慣らしましたけど。」
「い、いい、構わないから…!」
「無理ですよ、ほら、早く、がまんできないんでしょ?」
カカシは、そういって肩を掴んでソファにうつぶせにされ、尻に顔を寄せてくるテンゾウのなすがままになるほか無かった………






「ベタベタだ……」
「…はい…?」
「風呂に入ったばっかりなのに…」
「あ〜〜〜」
「また、べたべただぞっ!テンゾウ!!」


カカシが眉を怒らせるとおり………

二人は、汗やら唾液やら、精液やら………ご飯粒やらで見る影もなかった…………。


「スミマセン、ボクが責任もって、カカシ先輩をキレイにします!任せてください!!」


そう、全開の笑顔で宣言した後輩に、カカシはひょいと…先ほどの影分身の彼のように…抱え上げられ、浴室に連れ込まれた。


「まてっ!!テンゾウ!おい、ちょ…ま…あ、ん、テ…」
「舌、噛みますよ…カカシさん…」
「テ……テン…あっ!!」
「お代わり、いきます!!」


「!!!!!テンゾウーーー!!!お前の食事はいつ終わるんだーーーー!!!」





その日、カカシは、この後輩の前では、二度と影分身をつかうまい、と、決意した。



end

Update 2009.03.19