BitterSuite
〜SuiteTaste〜


スウェットのズボンに、裸の肩にかけたタオルで髪をふいて出てきたテンゾウと入れ替わるようにリビングを出て行こうとするカカシの、手甲を外した細い手首をテンゾウが咄嗟に捉えた。

「なんだ、テンゾウ」


じろり、とカカシの夜をうつしたような濃紺の瞳がこちらを見つめる。

口布を外し、左目をとじているのだが、敵を前にしている時のように、冷たい空気をまとっていて、しばらくテンゾウがあったことのない…暗部の、戦闘時の、カカシのようだった。


そんな彼を…


「…テ…!!なにす…!!」

テンゾウはそのまま抱え上げてソファに放り出した。

この人が誰とデートしようが、誰とチョコレートをやったりとったりしようが、そんなことは今、自分には関係がないじゃないか。

この人が言ってくれたことだ。

─テンゾウ。 お前は  今、何をしたいの…!?  自分のしたいことをいつもちゃんと考えてろよ。
そうすれば…例え道を間違えたとしても、後悔はしないですむ…


僕のしたいこと…
僕は、今。
カカシ先輩が欲しい。誰にも渡したくない…



ソファに転がされて呆然としているカカシの上にのしかかり、フローリングから蔦を生えあがらせてその手首を絡めとると、頭上にひとまとめに押さえつける。
そのまま白いトレーナーの裾を捲り上げると、さらに白い肌が現れた。

「…先輩。肌着を着ないとまた風邪をひきますよ…」
「…な…!!」
「でも、こんな時は、便利ですけど…」

カカシの返事を待つこともなく、にっこり笑ってテンゾウはさらされたカカシの胸にしゃぶりついた。

……!!








ん、んん…



二月の半ばの木の葉の里は、夜に向かってしんしんと冷えていく。

しかし、リビングのソファでカカシの体を暴いていくテンゾウに、寒さを感じる余裕などなかった。
風呂上りの体温はすっかりさめているはずであったが、違う熱が下半身から這い上がり、簡単に高まる己が組み敷いた白い体に、頭が沸騰しそうだ。

カカシの下着の中で動いていた手がもどかしくなったテンゾウは新たな蔦を伸び上がらせて足首を絡めとると、高く持ち上げた。
「な、なにすんだ、テンゾウ!!」
カカシの声も聞こえないように、いきなり下着ごとスゥエットのズボンを足首まで引き下ろすと膝を裏から掴みとめたままカカシの顔の横にまで開いて押さえつけた。

ううっ…

カカシからは低く、くぐもった声が漏れた。

急所をあからさまに自分にさらして、肩口に顔埋める大事な人を…

ホシイ…
ホシイ、ホシイ、ホシイ…

カカシのその部分が、堅く、ぬれて立ち上がっているのに安心して、テンゾウはそのまま顔を寄せた。

「…テンゾウ!!やめ…止めろ…!あっ!」

足への拘束を蔦に変え、自分の両手を自由にしたテンゾウは、堅くとがった胸の飾りに片手をのばし、溢れてくるものでぬるついているカカシの性器を口に含んだ。

「っ……!」

息を詰めるカカシにちょっと口の端を上げて笑顔になったテンゾウは、更に空いた手で、その後ろを探り始めた。


明かりを消せ、と、頭の上の方から掠れた声がする。


煌々と照るリビングの照明の下、あられもない格好で肌を晒すカカシはいたたまれないにちがいなかったが、テンゾウはそんな彼を堪能するまで明かりを落とすつもりがない。

「せっかく…なんですから…もっと見せてくださいよ…」
「な、なにが…せっかく…な、あ、あ、う…!」
「…気持ちよくなっている先輩を見るのが気持ちいいです…」

気持ちいいわけあるか、とか、
苦しいだけだ、とか、

頭の上から散々苦情が降ってきていたが、テンゾウは再び咥えたカカシのそれが、更に反り返っているから、何も気にしなかった。


いきなり始めてしまったので、何も準備がない。

だが、カカシに怪我をさせる気がないテンゾウは、執拗に、彼と繋がる部分をほぐし始めた。

ひ…あ…


一本…二本…


増やされていく指に、比例するようにカカシの声はかすれて高くなる。

三本目が、カカシの中を探り始めると、とうとうカカシが降参した。

「も、いいから、入れろ…!」

「駄目ですよ…まだ…今日は…僕、特大サイズになってますから…」

………!!

「な…お、お前、おかしいぞ…!なんで…そ…あ…!!」
「まだしゃべる余裕、あるんですね、良かったです。これくらいで一杯一杯になったら、後が大変だから…」

そういってカカシの性器の先端をぺろり、と舐め上げたテンゾウに、カカシが息を詰めて仰け反る。

「先輩…今日は誰にチョコレート、もらったんですか…?」
「…もら…ってない…あ…」
「…先輩が貰ってないなんて…信じられないな…」

はぁはぁ……

テンゾウにあからさまにせめられたカカシは、息が上がってしまっていて直ぐに反論できない。
「アカデミーに…置いて…きた…っ!」
自分とおんなじことをしてきたのか、この人は、と、今度は指で開いていた場所に舌をぬるりと入れて舐めながら、ちゅ、と音をたてて吸い上げる。

…く…っ!

「なら、それ以前に貰ったのは…?」
「貰って…ないよ、そんなもん…!ってか、そこでしゃべる…な、テンゾウ!!」

僕、見てましたけど、といいながら、またゆっくりと指を差し入れて中を探るテンゾウは、かなり意地の悪い気分になった。
何でこの人は、こんな風に僕に体をあけわたしながらも、隠し事をしようとするのだろう…

「あっあっあっ…!そこ、よせ、テン…!!」
「そこって…?」
「…うう…ほんとに…貰って…ないって…」
涙目になってしまったカカシが、かわいそうになってしまうが、いつもこのままごまかされてしまう、という自覚のあるテンゾウは、今にも達しそうなカカシの堅い性器の根元をきつくつかんだ。

「…あっ!!や…っ!テンゾウ、いや…!」

「僕、見てたんですよ、先輩がポニーテールのかわいい娘さんから、チョコを貰うの。あれ、チョコですよね、霧隠れの里の有名な…」

カカシはそのテンゾウの言葉に、ひくっと凍りついた。

「あ、あれは…」
「あれは…?」
「ん、んんっ」

手を止めて、テンゾウはカカシの返事を待つ。

「うう…テンゾウ…!」

今にも達しそうな所で寸止めを喰らったカカシは、身悶えて続きをねだるが、返事を待ったままのテンゾウは、手を動かす気配がない。

荒い息をついたまま、カカシがヤケのように叫んだ。

「か、買ってきてもらったんだよ…!」
「買って来て…って…なんで…?」
あまりに鈍いテンゾウのその台詞に、カカシはさすがに切れて暴れ始めた。
「馬鹿テン!くそ、放せ、これっ!ヤル気がないなら自分で抜くっ!!」
「ちょ、先輩、そ、それなら、そのチョコどこにあるんですか…!」
「自分で食っただろっ!!さっき!!!!」
はぁはぁと肩で息をしながら叫んだカカシの股間から、テンゾウは呆けた顔でカカシを見上げた。
「………食ったって…食ったって…カレー…?」
そうつぶやきながら振り返ったテンゾウの視界に、キッチンのくずかごが目に入る。
乱暴につっこんである、高級そうな菓子の包装紙、大きなケース…見覚えのある袋…

妙な味だったあのカレー…………


「カレーの中に入れちゃったんですか…?みんな…?」
「………!」

違った意味で顔を赤らめるカカシを見上げて、テンゾウは泣きそうになった。

デートに出かけた自分(これは、テンゾウの思いやりで、デートではなかったのだが)を見送り、自分に渡そうと思ってくれていたチョコを…きっと怒りに任せて捨てるわけにもいかず…
チョコをいれるとコクが出るというカレーに、どんどん、どんどん…いれていったのだろう…

「せ、先輩…すみま…」

カカシに絡みつかせた蔦を解き、中途半端に脱がせていた服をキレイにうでや足から抜いて全裸にしたカカシを、テンゾウは大事に腕に抱え込んだ。

「な、にがスミマセンだ…この…!んん!!」

際限なく文句がもれそうな口を、テンゾウはそっとそのまま口で塞いだ。

文句は明日聞こう。

雷切のいっぱつも来るかもしれない。
でも今は…

「お待たせしました…!」

そんな間抜けな台詞で、テンゾウは彼を待ち望んでいたカカシの中に、半ば強引に押し入っていった。

「あっあっあ…!!!」

抱きとめられた腰から上をギリギリまで仰け反って、カカシはテンゾウの胡坐の上で悲鳴をかみ殺す。

「スミマセン…先輩…僕…僕がもらえるなんて思わなくて…誰かと出かけるんだとばっかり…」

カカシは、奥深くに侵入されたまま、荒い呼吸を整えながら、この、いつまでたっても自分を過小評価するカワイイ後輩の後頭部を掌でぺちりとたたいた。

「おま…お前がいるのに…誰と…出かけるん…だ…馬鹿テン……」
「………カカシ先輩……!」

いつもはサラサラした肌触りのカカシの背が、汗にぬれてしっとりと掌に吸い付いてくる。
その手触りに感動しながら、テンゾウの手がカカシの背をたどり、小ぶりの尻をなで、繋がっている部分に下りていった。

「…あ…っ…そ、そこ…さわるなよ…テンゾ…っあ…!」
「そうですね…こんな風にカカシ先輩の中に入れるのは僕だけですね……!」
「テンゾ…!あ…!」

繋がっている所をくるりと指でたどられ、カカシはざあっと鳥肌を立てる。
敏感なその部分への刺激に、息を震わせてカカシは二人の体の間に熱い精を放った…









カカシがチョコを頼んだ山中花店の娘の口から、アスマに話が漏れたせいで、翌日から散々テンゾウはからかわれて酒の肴にされた。

上忍仲間に、
『あのはたけカカシからチョコをもらった、幸運な人間』
と、しばらく、上忍の高給にも痛い額の酒をあちこちで奢らされていた。

カカシはそれを気の毒がって止めようとしたが、本人が放っておいてくれ、と笑っているので、どうしようもない…


が、そんなある日、「月杯」に幻の銘酒がはいったからおごれ、と、ゲンマやガイたちに連れ込まれそうになっているテンゾウを見つけたカカシがさすがにいい加減にしなさいよ、と割ってはいると…
「かまわないです、先輩、借金してまではご馳走しませんから…!」
「っていっても、オマエ、すっからかんになるぞ…!?」
「すっからかんでも、すっかんピンでも全然平気です。!先輩が僕のものなんですから、何処の大名よりも大金持ちの気分ですよ!」
全開の笑顔でそう言い放ったテンゾウが、本気でそう思っているのは、今まで散々奢らせてきた上忍たちには明らかで…
テンゾウに奢らせていた上忍たちは呆れて肩をすくめた。
「………馬鹿馬鹿しい…俺たちはこいつにのろけられてたのかよ…!」
首を振りながらそうぼやいたゲンマに、
「そうですよ…?…惚気を聞いてもらうんだから、奢るのは当たり前です!」
胸をはってそう言い切った誠実が売りの上忍に、人気者のその恋人は、真っ赤になって、僅かに露出している右目を抑えて俯いてしまった。

勿論、それ以来、テンゾウが奢らされることはなくなった。

「つまらないですね、先輩…誰もカワイイ先輩の話を聞いてくれなくなりましたよ…?」
「………も、おまえ、だまれ………」


end


Update 2009.02.14