花に清香 月に影


〜願わくば花の元にて… 前編〜


カカシは自分がかつてないほど落ち込んでいるのを自覚していた。


いつもとまったく変わらない様子で屈託なく話かけてくる若い恋人に、いったいこれまでどれだけ救われてきただろう。
落ち込んでいる自分を、きっと気付いているに違いないのにまるでいつもと変わらずに接してくれる。

おまけに今回は…

俺としたことが…一般人の…女に手をあげるなんて…

カカシは自分で思っていた以上に、父のことにこだわっていたのだと、改めて思い知らされた。


すっかり乗り越えてきているつもりだったのにな…

理由(わけ)もわからず、春がキライだった。

とても小さな頃は、春は好きな季節だったのではないか?
もともと体温の低いカカシは冬よりも夏が好きだ。その冬から夏に向かう、春という、一年で一番心躍る季節を、嫌うようになったのはいつ頃からだ…?

真っ白に、花びらに覆われて事切れていた父。


あの時から、俺の時間は止まったままだったのか…


父の物言わぬ亡骸を覆い尽くす桜の花びらが、赤くそまって、幼かったカカシには消えない傷を刻んだ。

それを、風の魂を持つ太陽の子が、あっという間に吹き散らしてしまった。

後に残ったのは、里の憧れの忍だった父の思い出と、彼をなでる暖かな手のぬくもりだけだ。


俺を残して逝った父を、恨んだことも、憎んだことも…

そういえば、なかったな。

ただ、ただ、淋しいだけだった……


そんなことまで忘れていたのか…
忘れようとしていたのか…


「カカシ先生…?」

大きな青年に覗き込まれて、カカシは自分が物思いに沈んでいたことに気付いた。

「未だ退院したばっかでこんなトコまで来ちまって、大丈夫だったってば…?」
「…ああ、大丈夫だよ。」

カカシは、さっきは悪かったな、と言ってしまえない自分の大人げのなさに、ため息をついた。
だが、そんなことを言わなくてもこの隣にいる大柄な青年はちゃんと解ってくれているのも知っている。

自分の弱い部分も脆い部分も…

全てひっくるめて欲しがってくれる。


そばにいるだけで凍えた体の芯まで暖かくなるその熱いチャクラ。

たまには嬉しがらせてやるのもいいか…

カカシは、隣を歩調を合わせて歩く青年を見上げた。

「…好きだぞ…ナルト…」

一つだけ見える藍色の瞳を、コバルトブルーの大きな瞳にしっかりと合わせ…そう言った…


途端に…


「せ、せんせぇええええ!!!反則だってばよぉおおおお!!」

そう叫んだ青年にひっさらわれて…












「ナ、ナルト…! お、落ち着け…!」


瞬身で戻った部屋で、そのままベットに押さえ込まれてしまった。

ッ…早まったことを言った…!

と思っても後の祭りというものである。

そういえば、任務帰りにチャクラ切れを起こしたまま入院してしまい、…ずっと体を交えていなかった。
そういうときに、うっかり不用意に煽るようなことを言った自分のウカツさに、カカシは舌打ちをする。

ベストの前を開き、アンダーを捲り上げ、胸の匂いをかぐように鼻先を胸元に突っ込んでくる若者の頭を抱えて、カカシは小さな声で言った。

「ら…乱暴にするなよ…これでも…一応病み上がりなんだからな…」

体の力を何とか抜いて、足の間に大柄な若者の体を迎え入れる。
そこでやっと、拒まれない、と知った若者の性急な仕草が、ゆっくりとした愛撫に変わった。


若者の体から、じんわりと暖かい炎の色をしたチャクラが溢れ出、カカシの体を包み始める。
ため息をつきたいほどの安堵感に、カカシは口布を下ろされた素顔のままで、真っ白な喉を晒して仰け反った。


若者の大きな蒼い瞳の虹彩が、欲情に濡れて、細長く光っている。

九尾を完全に己に取り込んでいる彼の膨大なチャクラが、捲き込むようにカカシを包み、溶け始めている彼の肉体(からだ)を熱く燃え立たせていく。



服を脱ぐ手間も惜しんだ若者に、カカシは忍服を長い爪をひっかけて簡単に裂かれてしまった。

よせ、だの、止めろ、だの、散々クレームを付けはしたが、腕は若者の頭を抱え込んでしまっている。

長く伸びた犬歯をみせて、にやり、と男くさく笑った彼は、無防備にさらしてしまった白い喉の、薄青く脈打つ頚動脈に長く伸びた舌を這わせてきた。





自分は全裸で、ナルトがベストも脱いでいない、というこの状態をカカシは本当に何とかして欲しかったが、下手に口をきこうとすると甘く掠れた声しかでそうもなくて、ひたすら唇を噛み締め、ナルトのベストの襟を引っ張るしかない。


「ナニ…?せんせ、良くない…?」
「…ち、ちが…」
「此処は…?カカシ先生、ここ、好きだったってば?」
「ん…っ!そ、じゃなくて…!んあ…」

長い舌に口中を蹂躙するような口付けを仕掛けられ、カカシは早くも息が上がり始めている。

「ナ…ルト…服…ぬげ…金具………冷た…あっ!」

両手を降参するように、顔の脇に投げ出して荒い息をしているカカシの腰の上に乗り上げていたナルトは、そう懇願されて、漸く上体を起こし、りょーかいだってばよ、と、勢いよく服を脱ぎ落とし始めた。

カカシより、一回り大きく、みっしりと筋肉の鎧に覆われ鍛えられた若い体が露わになる。

カカシはぼんやりと、初めて彼の班にきた、12歳の小さなナルトを思い出していた。

……でかく…エロくなっちゃってもう…!誰だよ、こんなエロ忍者にしちゃったの…!

だが、にぱっと幸せそうに笑ったその笑顔は、カカシが教えていた下忍の頃と、少しも変わっていない…

などと思いをめぐらせていられたのもそこまでだった。
いきなり膝裏を掴み上げられ、顔の横まで大きく開いて持ち上げられると、あからさまにさらされたカカシの腰の下に枕を差し入れてその姿勢を固定すると…

「な…にするんだ!コラ!」

慌てるカカシに委細かまわず顔を埋めてきた。

…お、おれか!俺が指導方針を間違えたのか!?


長い舌が、カカシの後ろの孔を侵し、奥に入り込んでくる。

中の壁の湿った肌をゆるゆると擦られ、カカシは息を詰めた。
引き抜いて、周りを舐め上げながら、気持ちいいか、と聞いてくる。
その呼気が敏感になっているそこの肌にふれて、カカシは体を震わせた。
「そ、そんなとこで…しゃべるな…!」
「…そだな、気持ちいいのは、ここをみりゃ、わかるってばよ!」
そういって、硬く立ち上がり、露をともしているカカシの情動に軽く犬歯を立てた。

「あっ!ああ…あ!!」

いきなりの強い刺激に、なんの心の準備もしていなかったカカシは、簡単に達してしまった。

「…!」

仰け反ったまま、体を震わせるカカシを、その情で顔をぬらしたまま、滴るそれを長い舌で猫のように舐めとりながら見下ろしたナルトは、

「先生、はやいな、気持ちよかったってば…?」
「ナ、ナルト…」
「んでも、今からそんなに簡単にイッちまってたら、先は長いんだからもたねぇってばよ?」
「な、長いって…どれだけするつもり…なんだ、お前!」
「ずっとお預けくってたぶん、まとめていただくってばよ!!」

そういうと、嘗ての教え子は、カカシの情動を一気に喉の奥にまで飲み込んだ。

「〜〜〜〜〜くぅっ!!」

脛でナルトの頭を挟み込むように抑え、金色の頭に指を差込み、抱え込んでしまう。

足、緩めて…?動けねぇから…

カカシの性器を飲み込んだまま、器用にそう囁くナルトに、カカシはさらに追い詰められる。

口に含まれたまま話されると、舌や歯が当たり…

「ナルト…ナ、ルト…っ!!」

紅いチャクラの腕が、カカシの白い胸を這い、硬く立ち上がってしまっている乳首をそれぞればらばらに捏ね始める。

うう…っ!

くぐもった声しかでないカカシは、放出の衝動に重く痺れ始めている下半身をもてあましながら、快感と苦痛はとても似ている…と、ふと思うのであった。



続く…


Update 2008.12.13