月を抱く
〜手の中の白い月〜
カカシ先生、大丈夫…?
熱い気配に覗き込まれてカカシはけだるい体を起こそうとした。
「………!う……」
「せんせ?」
「…………」
無言でベッドに再び突っ伏してしまった年上の恋人を、でかい図体の若者が覗き込んでくる。
「やっぱ、無理させちまったってば?」
はいはい、しっかり無理させていただきましたとも。
月のようなカカシ先生をどうしても捕まえたかったんだってばよ、と、年若い恋人に…何年も何年もその成長を見守ってきた…涙ながらにかき口説かれて、心動かされずに済む筈も無く…
自分に認められたくて無理をした。
対等になりたくて無茶をした。
それで自分に迷惑をかけてしまって、怪我をさせてしまって、自分がイヤになってさらに無茶をしてしまった…
木の葉病院から傷身のカカシを連れ帰って、ナルトは、子供のように泣きながらそう打ち明けた。
「綱手のばーちゃんに、骨は拾ってやるから当たって砕けて来い!ってはっぱかけられたってば」
広い胸にカカシを抱きこんで、そう打ち明けたナルトは、でも嫌われてなくてよかったってばよ、と、開けっぴろげに笑う。
こいつは知らないのだ。
自分がどれだけこの暖かい笑顔にまいっているか、を…
たしかに、カカシは今度の任務でナルトに大変な目にあわされはしたのだが…
俺がお前をキライになれるわけないでしょーに…
ま、たまーに呆れることはあるけどな…!
「ナルトォッ!!!」
無茶をしすぎて危機に陥り、それをきっかけにして赤い禍々しいチャクラが若者を覆いつくし、蒼天の瞳を金色に染めていく。
全身にチャクラを纏い、カカシは四つんばいに這う、若者の懐に飛び込んでいった。
一瞬の差で札を額に貼ることができたものの、3本めが出掛かっていたせいかナルトの暴走は完全には収まらなかった。
獣じみた悲鳴を上げて転がりまわる愛弟子を体で押さえつけ、自分で自分を傷つけるのを止めようとしたカカシは、若者の目が情欲に濡れているのに気付くのがおくれてしまった。
九尾の嗅覚は、カカシの傷ついた暖かい血に触発され、その欲を猛らせていた。
長く延びた爪がカカシの暗部服をいとも簡単に引き裂き、さらされた白い首筋に長く延びた牙を立てた。
「あっ、う……!」
無表情なナルトは、口中に溢れた鮮血を音をたててすすり上げる。
「……く…」
無言でカカシの着衣を剥いでいくナルトに、しかしカカシは抵抗をしようとはしなかった…
あっ、ひ…!
九尾のひと暴れで荒野となったかつて美しい森であったその地に、カカシの掠れた苦鳴がひびく。
慣らしもせずに体を繋がれた苦痛はカカシを苛んだが、暴走を抑えるためにナルトが自分に縋ってくれるのにカカシは深い満足を覚えていた。
ナルト…ナルト…
満足がいくまで俺を貪ればいい…
満腹したら…また、いつものお前にもどってくれ…
きつく交わられながら、カカシはナルトの金色の頭をかき抱く。
う、うぐ…
ナルトがカカシを抱え込んで、その中にしたたかに放った時、既にカカシに意識は無かった。
「あそこで無茶しちまったのに、帰ってきて、また俺ってば我慢が利かなくてカカシ先生にさかっちまったけど、怪我、酷くなってねぇ?」
そういいながら、若い六代目火影候補は、あろうことかカカシの片足を掴んで大きく持ち上げてきた。
「……な、な、なに…わっ!!」
簡単に足をつかまれて広げられたのもショックなら、それをふりほどけない自分にもショックだ。
「や、やめなさいって、なんてこと…おい、ナル…ト!!」
「あうう…赤くなってる…ここ、痛くないかな、せんせ…?」
「どこを覗き込んでんだ!!ナルトッ!!足離せ!!っつーか指…!指を…入れる、な!」
「痛そうだってば…オレのせいだから、舐めてやるってば…!」
「やめろ、馬鹿っ!!」
「遠慮しなくていいってばよ!心込めて舐め……イテェ!!」
「い、いい加減にしろよ、お前、全く!!」
反対側の足でナルトの頭を蹴り倒し、ようやく足を取り返して大股開きの体勢から逃れたが、かえってそれでナルトを煽る結果になってしまったとはまるで気付かず…。
「ちょ、ちょ、ちょっとまて、それ何!?それなんだよナルト!何を…あっ!!」
「ちゃんと化膿止め、痛み止め、ぬっとかないと後がつらいだろ、先生。イテェからヤるのいやだっつったって、オレ、ちゃんと我慢する自信ねーし!」
待て。
待て待て待て!ちょーーーっと待て!
おかしいだろうよ、それは!!
胸のうちで叫ぶ言葉は、体の中に入り込んでくるナルトの指のせいで口にできず、それどころか、口をついて出るのは掠れた喘ぎばかりだ。
それがこの猪忍者を煽るのはわかってはいるのだが…
う……っ
俺、こんなに快感に弱かったっけ…?
息があがってしまい、はぁはぁと口呼吸でしのぎながらナルトの厚い肩を掴んで堪える。
薬を塗りこめる、という言い訳で体の中をかき回してくる指が、ナルトのものだ、と考えるともうだめだった。
「あ、う、ナルト、ナ…ルト…っ!!」
「せんせ…気持ちイイ? 痛くねェ? 入れても大丈夫?」
な、何をいれるって…?
と霞む頭で考えているまもなく、当の本人はカカシの了解など、取る間も惜しんで…
「あっ あっ う、あ、あああ!!!」
「最初…最初だけ、ちょっと辛抱だってば…せんせ…う、ほら、も、入った!」
確かに、でかいナルトの一物が、入り口をこじ開けてくる痛みに不覚にも涙がにじんだが、一旦中まで受け入れてしまえば、心ならずも散々盛られなれた体は自然と快楽を探し、受け入れていく。
くっそぉ〜〜
拷問訓練なんかで苦痛に慣れてる自分が口惜しいぞ…ナルトぉっ!!!
ナルトに激しく揺らされながら、痛みと快感の間を行ったりきたりするカカシは、自分の肩を抱きこむナルトの手が、既に自分より大きくなっているのに気付き、なんだか負けた気がして悔しくなった。
「おま…生意気…」
しかし、そう一言漏らすのが精一杯で、厚いナルトの僧帽筋をつかむカカシの手はぽとりとシーツに落ちた。
「ん…?せん、せ、なに?なんか、言った?気持ち、よくない…?」
汗にまみれ、夢中でカカシを貪る若い恋人は、大事な想い人がとうにオチているのに未だ気付いていなかった…
「それで…?なんでツーマンセルの任務に、お前一人できてるんだ、ナルト?」
火影の執務机に行儀悪く座って、大きな胸の前に腕を組む五代目にじろりと睨まれたナルトは首をすくめるしかない。
「えーと、カカシ先生は…、あ、いつもの遅刻じゃね?」
「ヤツはアタシとの約束に遅れるほど度胸はよくないよ!!」
「うわ〜〜、カカシ先生も、あんがい、小心者なんだってばよ…!」
「やかましいっ!!正直に吐きな!カカシはなにしてんだい!?」
「う、あ、あの、えと、その、俺がその、ちょいと無茶、しちまって…」
首をすくめながら上目遣いにこちらをみる、図体ばかりはでかい、この愛嬌ものの若者を、ついつい笑って許してやりそうになって、綱手はあわてて顔を引き締めた。
「そうかい、そうかい、よッくわかったよ。カカシを名指しできているこの任務を受けられなかった分の差額はお前の給料から差っ引くからね!」
「うえ、そりゃ、ひでぇってばよ!ばーちゃん!」
「うるさいよ!全然足りないのをおお負けに負けてやってんだよ!さっさと別の任務をもらってきな!!」
りょうかいだってばよ〜〜
とエコーする声をのこして、次代の火影候補は窓から飛び出していった。
後には肩を震わせて笑いをこらえるシズネと盛大にため息をつく五代目が残るばかりだ。
里は今日も暑くなりそうだった。
end
蛇足
これは表のオトナルカカの「盗月」にlinkしてるお話しですので、そっちを先にみていただくと、さらに笑え…じゃねーって、楽しめるのではないかと…(^v^)
Update 2008.10.13
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