ただいま修行中!



初めにお断り(^^ゞ

このお話は、2010/5/17 発売のWJのNA/RU/TO のお話を元ネタにしております。

コミックス派の方や、まだ読んでいらっしゃらない方は、十分ご注意ください。

大したネタばれでもないですけど、WJをご覧いただいてないと、なんだかよくわからないと思います…orz
え…?読んでるけどよくわからなかった???
あははは、す、すみません、それはもう、ワタシも「修行中」と、言う事で……(^^ゞ


大丈夫な方は、スクロールPlease!!
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「隊長、すげーな、それって新術?」

ナルトにそう、眼をキラキラさせて聞かれたヤマトは、ちょっとびっくりしたように振り向いた。

「ソレ?」

「さっきタコを縛り上げたアレだよ!」
「………タコじゃなくてイカだ……ナルト…」

いい加減に見分けをつけろ、と、突っ込みたいヤマトであったが、確かに、ナルトが滝に打たれている間、拘束系の新術を開発した方がいいと思い、彼自身、かなり真剣に取り組んでいた術だったので、とっさに出せて満足していたし…事実自分でも有効度が高いと思っていただけに、ヤマトもつい、頬が緩む。


「意外と、見てるね、ナルトも。」
「へへへ、隊長もまだ修行するんだって分かって、俺も嬉しいってばよ!!」
「時間は有効に使わないとね。ボクものんびり待っているわけにはいかないよ」
「……カカシ先生だったら、イチャパラ抱えて昼寝してるかもしれねーけどさ…!」
「……敢えて否定できるだけの根拠のないのが哀しいな……」
ヤマトが苦笑しながら肩をすくめると、

「ヘィブラザー!『ってばよー』は修行やる気あるってばヨゥ!!」

妙なノリで声がかかり、ナルトは飛び上がった。
「……なんだか馬鹿にされてるような気がするんだけど、俺の気のせいかな…?」
「……気のせいだと考えた方が、気持ちよく修行出来ると思うぞ、ナルト…」
「……そ、そだな、俺も大人になったってばよ!」

元気に八尾の人柱力の方へ走りだしていくナルトを見送ったヤマトは、やっといつものあいつに戻ったな、と笑った。




◇◆◇





島での修行は、ヤマトがいることで随分利便性が増していた。

野宿はしないで済むし、水にも不自由しない。


─ほんと、隊長って便利だよなーーー

どうやら建築関係の物らしい本をぱらぱら読んでいるヤマトの気まじめな横顔を見ながら、先に床についていたナルトはため息をついた。

七班の上忍師である、彼らの先生…はたけカカシという人間が、意外に…普段ののんびりした言動からは想像できないが、「厳しい人間」だという事をナルトは知っていた。
他人に厳しいのではない。自分に厳しいのだ。
彼自身を犠牲にしても、背にかばった者たちを守り通す、そんな厳しさがあった。
だから、生半可な人間では、カカシという上忍師の相方は務まらないのだ、という事も、今のナルトなら十分に理解していた。

戦闘ならともかく、対人関係での駆け引きはとてもカカシの足元にも及ばないナルトは、だから先生は…隊長と一緒に任務に当たるんだな…と、感心もし、何やら嬉しくもあって…

つい、言った。
そう、勿論、単なる感想で、ナルトに何の意図するところがあったわけでは……勿論ない。


「隊長が新術、モノにしたの見たら、カカシ先生びっくりするかもな?」
「…ぇえっ!?ナニっ??」

いきなり眠ってると思っていたナルトが声をかけたもんだから驚いたのだろう、持っていた本を放り投げるようにして飛び上がってしまう。

─隊長…暗部上がりなんだろ?無防備すぎねぇ…??


「なんだよ、隊長がびっくりしてどうするってば…!カカシ先生が、隊長がそうやってまだ修行してるのを聞いたら、喜ぶかな、びっくりするかな?」
「…そうだねぇ…どうかなぁ。先輩はよくわからないところがあるからねぇ」

─付き合いの長い隊長にまでよくわからないって言われっちまう先生って…

クスクス笑いながら、ナルトは本格的に寝入ってしまったが、ナルトの一言が、彼のサポート役に与えた波紋の大きさにはまるで気が付いていなかった。



◇◆◇





─先輩がびっくりする。…びっくりする先輩……み、見てみたいかもしれないっ!!


修行につかれたか、健やかを通り越してやかましいナルトの寝息…別名イビキともいう…も聞こえないかのように、ヤマトは闇の中で大きく目を見張っていた。


いつも瓢箪鯰で、どんな場面でも慌てることがない。戦闘中はこれほど頼りになることはないが……

こ、恋人の立場としては。
ちょっとは見直してもらいたい、という気持ちは十分ある。


火影のサポートで、木の葉を離れられないカカシは、ナルトの修行の進捗具合をしりたいだろう……

そうであってほしい。
そうに違いない。


そのついでに、新術を開発した、と、知らせたってそれは、別にかまわないのではないか…??



──へぇ…!ヤマト、ヤルねぇ!



そう言って目を三日月のようにして笑う先輩を…久しぶりに見たい……
見たい、と言ったら見たいっ!



そうして、物事にはタイミング、というものがあった。


幸か不幸か、ナルト達を運んできた舟が、翌日、食糧の補給に、島に立ち寄ったのだ。




うん、本体が持ち場を離れるわけじゃない。
木分身が、ちょっと…先輩に報告に行くんだから…、よし、これは別に…大丈夫なはず…!

しっかり自分を納得させながら木分身を出したヤマトは、いつもより多めにチャクラを移行した。

「しっかりカカシ先輩を見てきてくれよ。修行のあいだ、ボクは会えないんだからね。」

自分の分身に言い聞かせて、そっとその場を離れる。
勿論、優秀な暗部上がりの後輩の分身がへまをするはずもなく、見事に穏行して、舟に紛れ込んだ。




しかし…

これほどの遠距離…それも海をまたいだこの距離での影分身。
その難しさにヤマトが気付くのは、まだ先だった。




◇◆◇




それで…?




不機嫌な先輩に、分身ヤマトはちょっと小さくなる。

本体からの指示が、非常にとぎれとぎれだ。
あれだけの距離、海を挟んでの…離れているのだから無理もない。


─どうする…?先輩がこんなに不機嫌だった場合を想定していなかったぞ…



勿論、優秀な後輩本人が来ていれば、何とでもなったのだが、思考をするのにもチャクラを消費するため、新術披露のためのチャクラを使いこむわけにもいかず、ゆっくり判断する余裕のない分身ヤマトは困惑を極めていた。




◇◆◇




後輩の分身を前に、カカシはため息をつきたくなった。


何を考えてるんだあいつは…!!!!


火影の御前会議にそっと紛れ込んできて…(そのあたりはさすが、としか言いようがなかったが…)あれよあれよと拉致られてしまった。

ナルトに何かあったのか、とも思ったが、それなら報告は綱手の方にするだろう。

上部の連中が、オブザーバーのヤマトが木分身を五代目ではなく、自分のところに来寄こしているのを問題視する前に、さっさと要件を聞き出して、速やかに対処せねばなるまい。


で、何の連絡事項だ、と、聞こうとしたカカシは、


「スミマセン、先輩、要件はこれ一つなんです、もうチャクラが残り少ないんでとにかく、これだけは…!」

そう言って後輩の分身が、カカシが見たこともない印をきる。


「黙殺縛りの術っ!!」

「な、何っ!?」



フローリングから伸びてきた木の太い枝が、しなやかにうねって驚くカカシを縛り上げた。


見かけは硬質の木が見事な柔軟性を持って拘束すると、あっという間に、硬直し、カカシは印を切って拘束から逃れることもできなくなった。


「マダラを捕まえ損ねてから、ボクも研究しまして、拘束した相手のチャクラの動きも封じるように陣をつくってるんです!どうでしょう、先輩?」



目に見えない尻尾でも振っていそうな分身後輩の様子に、カカシはめまいがした。



─本体と距離がある影分身の問題点が、見つかった、ってことだな……


いくらなんでも…居眠りをしてナルトの脱走を見落とす意外とうかつな後輩だが…本人が来ていれば、新術を自分に見せるにしたってもっとTPOを考えるだろう……



「……お前……これを見せるのに、わざわざ戻ってきたわけ……?」




◇◆◇



そう聞かれた分身ヤマトは、力いっぱい頷いて……

笑顔のカカシの眼が笑っていないことに気がついた。

「ナルトになんかあったかと、上の連中は血相を変えてたぞ…?綱手様に報告する前にオレに報告するってのは、暗部上がりの連中は、オレを火影にしたがっているのか…って…問題になるとか思わなかったわけ…?」


思いませんでした………

っというより、ここで新術を展開するだけのチャクラを持たせるので精一杯で、他に気を配る余裕などあるわけがない。

「……えーーーと…海上を…超えると……チャクラ保存が……意外と難しく……」

「…ほう。なるほど。海、というか、水と塩分がチャクラのコントロールに影響するのか……」
「…はい、陸上なら…この距離でも、問題なく本体と交信出来るんですが…」
「今は…?」
「カカシ先輩はお元気か…と、聞いてきたまま……」


目の前で、木遁の木に拘束されたまま、カカシががっくりと頭を垂れた。


そこにいたって、ようやく分身後輩は、色々と不味かったという事実に気がついた。
さっさと、新術を解いて、分身を消してしまうべきであろう…

「…スミマセン、先輩、すぐに解きます…、えと、本体に何か…ご伝言は…?」

「………………いや…………いい。帰ってきたあいつに直で言う。………」


ひぃいいいいいいいい

怖い。怖すぎる。


そして分身ヤマトは恐ろしい事実に気がついた。。


新術を……

……解除するチャクラが足りない…………!!!!!!!!!!



「どうした…?テンゾウ…?中々いい術だよ、ま、それだけは分かったから。早く解いてよ。」



………


そうして……


遥か…海上の孤島…
遠く海を隔てて、カカシの一途な後輩は、影分身が新術披露のあと、術を解除して、その情報が還元されるのを…
ひたすら心待ちにしているのであった……





end




Update 2010/05/18