Please seek me !

待ち合わせ場所で、テンゾウは4時間近く待って、ようやく腰をあげて、まだこない恋人を探し始めた。

「又、ですか、カカシさん…もう、店、閉まっちゃいますよ…また、ボクとの約束忘れてるんだろうな…」

そう一人ごちながらカカシの引っかかりそうな所を見て回ろうとした時…シズネが火影屋敷から駆け出してきたのが目に入った。
彼女なら知っているかもしれない、と、声を掛けようとすると、彼女の方から走ってきた。

「ヤマト隊長、ヤマト隊長、丁度よかった!!」
「?どうしたんです?」
「カカシさんから、伝言を預かっていたんですけど、そんなことより、救援に…!」
シズネのその言葉に、テンゾウは一気に緊張した。

シズネの話によると…

急に名指しの任務が入ったカカシは、テンゾウに断りを入れる暇もなく、里を出立したという。
山火事で孤立した温泉の村に、大名の長男が取り残されており、大名が名指しでカカシを隊長とした班を要請してきたという。

「ヤマト隊長も班の一員として入っていたんですけど、居場所が分からなくて…」
…ボクの居場所なら、カカシ先輩が知ってた筈だけど…

「とにかく、任務は成功したんですけど、カカシさんが、皆を逃すために残って、行方が…」
「場所は何処です!?」

シズネが説明し終わるのを待たず、テンゾウは里を飛び出していった。





山火事はかなりな規模だった。
カカシたちは十分逃げ切れる筈だったのだが…

わがままだらけの大名家の長男があれもこれもと荷物を増やし、機動力が落ちた一行は火にまかれてしまった。

カカシはもてるチャクラ全てで神威を発動させ、メンバー全員を逃したが、当のカカシはチャクラ切れで動けなくなり…

「さっさと行け!!俺には未だ奥の手がある。お前達が居ちゃ使えないって!」

そう一括されて、メンバーは心を残しながら、大名家の子息の襟首をつかんで逃れていった。


炎はどんどん押し寄せてくる。
熱は耐え難いまでになり、汗もかくそばから蒸発するように乾いていく。
そんな状態でありながら、カカシの表情はいつもと変わらない。
動けないまま、既に火の燃え移った木にもたれ何かをじっと待っている様子だった。

カカシのもたれた木がとうとう炎を巻き上げた。
大きく軋みながら真っ赤に燃え上がった大枝が、カカシの頭上に降り注いでくる。
カカシは瞬きもせず、じっとそれを見上げていた。








「いや〜カッコいい登場だったね、テンゾウ!」

木錠壁の中、テンゾウの胸に抱え込まれて、カカシはのんびりとそういった。
外は、多分灼熱地獄のようになっているだろう。
木錠壁にがつんがつんと何かがあたる音が大きく響いている。

「カ、カカシさん、勘弁して下さい…寿命が縮みました…」
「悪い、悪い。でも、お前にしちゃ、来るのに時間掛かったんじゃないの?」

恋人の、その余りな言い草に、テンゾウもさすがに反論した。

「4時間ほど、待たせていただいてましたから。」
「何、そんなにボーっと時間、つぶしてたの?早く探しなさいよ、オレを!」
「カ、カカシさん…」
がっくりと自分の首筋に顔を埋めてしまった頼りになる恋人に、カカシは、喉の奥でくつくつと笑いながら言った。
「お前ね、何のために、オレがお前を置いて出発したと思ってんの?この成り行きって、想像ついたからじゃないの。あの”馬鹿さま”は素行の悪さじゃ札付きなんだからね。お前っていう保険でも掛けとかなきゃ、こんなあほらしい任務、引き受けないーよ!」
「ボクが来るの、分かってたんですか…?」
「…あれ…?来ないつもりだった…?」

益々脱力して、チャクラ切れの動けない恋人の胸にすがり付いてしまった健気な後輩は、耳に響くその心臓の音に、心の底から安堵したのだった。








「今日の任務はそんなに難易度が高いわけじゃないけどね、念のために、3人とも、このタネ、飲み込んでおいてくれないか。」

そういってテンゾウに種子を渡されたナルトたちは、素直に口に入れた。


あの山火事から幾ばくか、カカシのチャクラ切れがようやく回復して直ぐの任務は、テンゾウと一緒に7班の子供たちとの合同任務だった。

ま、肩慣らし、ってやつかね?

のんびりと種を飲み込む子供達を見ているカカシの前に、テンゾウの手がぬっと突き出された。

「はい、先輩の分」
「は!?何、オレも飲めって??」
「そうです。」
「いらないでしょーよ、オレには!なにいってんの、お前」
「駄目です。飲んでください。」
「って、テ…ヤマト、お前ね、」
「いいえ。譲りませんよ。この前、先輩を探している時に、ボクがどんな思いをしたが、知らないんですか!」
「…う…」
山火事の任務の時には確かに心配かけた自覚のあるカカシは思わず口ごもった。
しかし…
こんなもの飲まされたら、オレがどこで何してるかテンゾウに筒抜けじゃないの。冗談じゃ…

「冗談じゃありませんよ。」
テンゾウの目が据わっている。


「君達、第一地点で待機しておいてくれないか。カカシ先輩にはしっかり納得してもらうから。」
振り向いて、きりっと班員の少女に指示を出す。
「はい、分かりました、ヤマト隊長。隊長がいっしょなら、カカシ先生も遅刻しないですよね!」
「え…!?あ?ちょっと、サクラ、あのね…!」

もごもごと何か言おうとするカカシをあっさり置いて、教え子たちはさっさと消えてしまった。

ヤバげな雰囲気に、とっさに逃げを打とうとしたカカシの体を、瞬時にテンゾウから延びた蔦が絡めとった。

「テンゾ、何のつもりだよ!」
「何でそんなにタネを飲みたくないんですか、カカシさん。」

あ、マズイ…呼び方がかわっちゃってるよ…

「や、だからね、テンゾウ、お前の種を…飲むって、その…」
「………いつも”下の口”では嫌がらずにボクの”タネ”飲んでくれてるじゃないですか…?」
なんちゅー下品な物言いするンダこいつは!!
さすがに真っ赤になったカカシだが、テンゾウの黒瞳の中に、言いようも無い不安の影を見出し、ふと抵抗をやめる。

大人しくなったカカシを、テンゾウは絡みついた蔦ごと、力いっぱい抱きしめた。

「ギリギリだったんです。あの時。ほんの一瞬でも、遅れたら…間に合わなかったら…そう思うと恐くてたまらないんです。」
「テン…」
「カカシさん…口、開けてください。」

小さくため息をついて大人しく口を開けたカカシに、テンゾウのそれが重なっていく。
子供達には抵抗があるだろうと種子の形を取って、接種させたが、カカシにその必要は無い。
テンゾウの細胞にその働きを仕込めば、発信機となるのだから。

口の中に流し込まれるものを、カカシが飲み下すと、テンゾウの唇がそっと離れた。

「カカシさん…あんまり無茶ばかりするようだったら、ボクの精液にも発信機の機能をつけますからね。」
「………!!!な………!!!!」
「そうだ、何で最初からそうしなかったのかな、ボクは…!」
「テンゾウ…おま…」
「いい考えだと思いませんか、カカシ……せん…!!?!!」


………





その日の任務は、勿論滞りなく終わったが、ヤマト隊長の頬に、長く平行に走った傷について、質問できる子供達は、誰もいなかった。



end
Update 2008.10.20
あとがき
うへぇ^_^;
なんかちょっと下品……下の口とか言わせてしまった^_^;す、すみま……

「者の書」
をつらつら読んでいて、「ヤマト自身の細胞を、植物に変質させてなされる木分身」それを、「種子状に変化させて対象者が体内に摂取することにより…」
って言うのを見つけて…
萌えました……(笑)

ヤマトの細胞 ヤマトの細胞…

日に日に壊れ具合が激しくなってくようです…(笑)