Fight
「五代目…本気で言ってます?」
里一番の上忍は、一つだけ出した右目を胡散臭げにすがめて、この里の長を眺めた。
里長の女丈夫は眉根をよせながら、
「しょうがないだろう。あちらさんは名指しでお前を指名してきたんだ。10倍の仕事料を出すといってきてるんだぞ。成功したら、さらに倍だすと!今里の財政状況はお前も知ってるだろう!少しは稼いで来な!」
そっぽを向きながら、言い放った。
カカシはあからさまにため息をつく。
「俺に、今はナルトの修行に付きっ切りになれ、ってこの前言いませんでしたっけ?」
「……情勢は刻々と変わるんだよ!ナルトの方はテンゾウもいるんだし、影分身にまかせておいて、ちょちょいと任務を済ませられるだろう!さっさと行きな!」
開き直った火影にそれ以上口答えせず、カカシは肩をすくめて丸い背中を一層丸めて片手をひらひら振りながら出て行った。
「綱手さま…ま、また…?」
「…ああ。アイツが嫌がるのはわかるがな…アイツもこの里の「顔」になって久しいんだし。いつまでも色仕掛けの任務もないもんだが…なんでここんところ、あいつにそっち方向のお呼びばっかりかかるんだ??」
シズネがぎくりと首をすくめたのを窓の外を見ていた綱手は気付かなかった。
確かに里は、今、未曾有の財政難である。ま、半分は、殉職した忍たちの遺族に慰労金を惜しまず払った所為なのだが、とことん足りなくなっていることを、シズネは綱手に報告できず…
こっそり内職をしていたのだ…
曰く。
【はたけカカシの素顔をゲットしてみないか?! ビンゴブックのアイドル、はたけカカシの素顔を本人に知られずスクープしたら、賞金XXXX!! 参加費はたったXXX…!】
やけっぱちで始めたイベントは、思わぬ効果をうみ、中々の収入になっている。
多少の相手に絡まれても、カカシなら問題ないし、里のためだから、と、シズネはカカシに内心手を合わせていたのだが…
始めは里人たちが面白半分に参加していたのが、なにやら、くだらない任務まで、カカシを名指して持ち込まれてくる。
カカシクラスの上忍だと、依頼料もしゃれにならないのに、(賞金と差し引きして、ぎりぎりになる)なぜか依頼が途絶えない。素顔を晒す機会が多くなる、と考えるのか、色仕掛けの任務も、ここの所急に増えてきていた。
今回の依頼とて、賞金と差し引きしても、かえって大赤字になるはずなのに…
風影奪還の任務でチャクラを使い切って倒れてから、やっと動けるまでに回復したと言うのに、ここのところの立て続けの任務はさすがにハードらしく、任務明けで徹夜のまま、ナルトの修行に駆けつけても何も知らないナルトには、
「カカシ先生ってば、相変わらず遅刻ばっかりだってばよ!俺の修行、ちゃんと見てくれる気あんのかよ〜〜!!」
そんなことを言って責められ、
「いや〜悪い悪い…!」
頭を掻きながらへらりと笑って交わしているのを見て、シズネは罪悪感で胃がキリキリ痛んだ。
そうだ…コレが終わったら、カカシさんにきちんと説明して謝ろう…
そう決心すると、幾分気が軽くなったシズネはまた仕事に戻っていった。
テンゾウはカカシの話を聞いて、がっくりと肩を落とした。
「ま、まだ、来るんですか、先輩…その手の任務……………」
「ん、だよな、俺、もういいおっさんなのにな…」
「い、いえ、先輩はまだまだ若いです、いけてます、かっこいいです!」
慌ててフォローしようとするテンゾウを、カカシは胡散臭げに眺めて、何も言わなかったが、明らかに機嫌は悪かった。
「や、先輩、そんな意味じゃないんですよ…先輩ほどのランクの上忍が、なんだってそんな任務をまわされるんだろうって…」
「ん、まあ、な〜。なーんか、ここんとこ、みょ〜に視線をかんじるんだよね〜〜だれか何かしてんじゃないかな〜とか思いながらさ、忙しくって…おまけに御指名多くてね〜、なんだかな…」
そういいながらも、カカシは影分身を出し、テンゾウの耳元に囁いた。
「どう考えてもナルトの修行の方が優先でしょ。だからそっちの任務の方に影分身をやることにするから、お前、五代目には黙っときなさいね」
テンゾウは無言で頷いた。彼とて、幾らカカシ本人と寸分違わない、とはいえ、影分身といるより、カカシ本人といる方がいいに決まっている。
因業おやじ…大名をたらしこんで情報を聞き出す程度なら、影分身で十分なはずだ。
更に影分身を変装させ、出立を見送った後、二人はまた、ナルトの修行に戻っていった。
が、二人は色々な意味で後にその判断を後悔することになる……
「テ…ヤマト、大丈夫か…!?」
いきなり赤い九尾のチャクラを湧き出させたナルトを渾身のチャクラで押さえ込んだテンゾウは荒い息をついて、地面に座り込んだまま、立てないようだった。
何度目になるか、ナルトもきついだろうが、押さえ込むテンゾウも、かなりな消耗だ。
「そろそろ、今日は休むことにした方がいいな、ヤマト?立てるか?」
腕を掴んでテンゾウを立ち上がらせたカカシは、転がってぜえぜえ息を整えているナルトに今日の修行の終了を言い渡した、その時。
「………!!!?」
テンゾウを支えていたカカシが急に膝を折って、屈みこんでしまった。
「っ!!」
「カカシ先輩…!?どうしたんです!?」
テンゾウが慌てて覗き込む。
「……一服盛られ…やがったな……!!」
「…!!影分身が戻ったんですか!?」
影分身が戻れば、分身の記憶、体験も全て戻る。
「に、任務は…完了してる。お、おまけがついただけだ…」
「大丈夫ですか、直ぐ、綱手さまのところに…!」
「……じょ、冗談じゃ…だめだ、テン…」
「カカシセンセーもうちょっと頑張れるってばよ!」
よろよろ立ち上がったナルトがそう言い出したが、
「今日は休んでチャクラの回復をはかったほうが効率的だよ、ナルト君!」
自分もふらつきながら、カカシを支えるテンゾウは、そういって、強引にカカシを綱手のところに連れて行こうとしたが…
「よせ、五代目んとこじゃ、駄目だ…」
テンゾウの耳元でカカシが小さく、拒む。
「…自分の影分身が何を考えてたか…分からん…催淫剤を…くらって…やがる…」
「……………!!!…だ、だ、だ、だい…じょ…」
「大丈夫じゃな…な、なんとか…しろ、テンゾ…!っつか、たのむ、も、」
呼吸が速くなっているカカシを抱えて、テンゾウは慌ててナルトに食事に行くように言い渡した。
「どうしたんだってばよ、カカシ先生…!ヤマト隊長が疲れてんのはわかるけどよ、何で先生が…」
怪訝そうなナルトに説明する時間を割くわけにも行かず、説明することも出来ず、テンゾウは残ったチャクラを振り絞って木遁の家をつくり、木分身をだして、自分はカカシを抱えて家の中に飛び込んだ。
「な、な、なんだってんだってばよ!?隊長??っつか、カカシ先生、どうしたんだってば??」
外に残った木分身のテンゾウは、
「あんまり大きな声では言えないんだけどね、ナルト君、君の修行だけに付き合えなくて、先輩は色々任務に借り出されてるんだよ。」
「…な、なん…じゃ、じゃ、俺の修行を見ててくれたカカシ先生ってば、影分身!?」
「反対だよ。任務に影分身を行かせたんだ。」
「へ…!?」
「五代目に知られると大目玉だからね。黙っててくれよ。カカシ先輩は君を優先したんだから。」
テンゾウにそういわれて正直にうれしそうになったナルトは、
「んじゃ、先生は…?」
「君の方に気を取られて、影分身にまわすチャクラが…少なくなってて…幻術を食らってるんで、今、僕の本体が解除してるんだよ。」
「な、な…!んじゃ、綱手のばあちゃんとこに…」
「それができないから…」
慌てるナルトに木分身のテンゾウが説明しかけたとき、
「………!っあ!……う!」
木遁の家のなかから、カカシの声が漏れてきた。
「……!!……!!」
その声のあまりの色っぽさに木分身のテンゾウもナルトも瞬時に固まってしまう。
「…ヤマト隊長…?カ、カカシせんせってば、ばあちゃんとこに行かなくてホントに、大丈夫…」
「や、僕に任せてくれないか、幻術くらってる写輪眼のカカシが里をうろついたら拙いだろう?」
「そ、そりゃそうだけどよ…」
「じゃ、君も食事をとって休憩しなさい。」
そう言ってテンゾウは追い立てるように強引にナルトを木遁の家から遠ざけた。
「………先輩…治まり…ましたか…?」
水遁で水を出し、ぐったりと木のベットに横たわったカカシの体を丁寧に手ぬぐいで拭っていたテンゾウは、晒された白い顔を覗き見ながら、心配そうに声を掛けた。
「ン…ま、なんとか…」
いつものなにげに胡散臭げな格好と違って、素顔をさらし、全裸で横たわるカカシには、ナルトの想像も及ばない壮絶な色気がある。
特に、「事後」とあっては…
十分免疫のある筈のテンゾウでさえ、鼻を押えねばならない始末だ。
「な、なんとか、中には出しませんでしたけど…どっか気持ち悪いところ、ないですか…?」
鼻を押さえながら、ふがふが言ったテンゾウに、カカシは体を捩って起こしながら、
「や、テンゾウ、迷惑かけたね、ってか、お前、随分、上手くなったんじゃないの?どこかで修行とか、やったわけ?」
いきなり行為の感想を憧れの先輩に直球ストレートで言われた純情な後輩は、鼻を更にしっかりと押えながら、あたふたと手を振った。
「と、と、とんでもない…です…そ、そんなこと疑われるのは…心外です…僕は…」
自分はまだこの人の恋人に格上げしてもらってるわけではない、と、思っている健気な”尽くしんぼ”の後輩は、憧れの人からのあらぬ疑いに悲しそうな顔で否定した。
人の悪い笑みを浮かべて、慌てふためく後輩を見ていたカカシは、テンゾウの首を抱え寄せると、チュッと音をたてて唇にキスをした。
そうしてトマトのように赤くなって固まってしまったカワイイ後輩の前で、悠々と服を着ると、
「行くぞ、ヤマト!」
すっかりいつもの胡散臭い上忍に戻り、木遁の家を出て行った…。
とうとう鼻血を押さえ切れなくなった後輩の様子を視界の隅に収め、くすくす笑いながら。
……カワイイったらないねー!俺が本気で、好きでもないヤツに突っ込ませてやるとでも思ってんのかね、あいつは…!
数々の男娼任務は、お得意の写輪眼で、相手を煙に巻いてこなしてきた。カカシが体を重ねてきたのは、その時、その時の「恋人」たちだけだ。
…鈍感な後輩はその事実にいつ気付くことやら…
結局、その翌日は、テンゾウ…ヤマト隊長が途中で昏倒し、カカシにかつがれて里に帰って、修行は途中休憩になった。
ナルトの盛大なブーイングを受けて、テンゾウがどん底に落ち込んだのは言うまでもない…。
end
Update 2008.10.01
あとがき :
初テンカカです。
どうもイメージのなかで、テンカカでは、カカシがテンゾウがぐるぐるするのを楽しんでいそうで…
でも、カカシ受け(笑)
男前受け? 実はラブラブなのに、テンゾウだけが気付いてないという…(笑)
木遁の家の中の出来事は、多分、Undergroundに…(笑)
下品、露骨が平気な大人のお客様だけで、お願いしますね┏0ペコ
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