それが手向けとなるのなら


〜猿飛アスマに寄せて〜

寂寞とした墓地の、その新墓の前に、10班の子供達が集まっていた。

野の花で作った花輪を供え、シカマルが真剣な顔で墓標を見つめている。…


あいつら…行くつもりだな…


カカシは遠くからその様子を黙ってみていた。

ならば、オレもついていってやらねばなるまいよ…

そう決心して踵を返すと、いつの間にか、気配もなく、彼の相棒がそばに立っていた。

「行ってやるんですか…?」

主語も目的語も無いその言葉に、カカシは一つだけ見える眼を三日月のようにして笑う。

「アスマは短気なやつでな。子供達を、こんなに直ぐにヤツのそばに送りでもしたら、オレがアッチにいった時にナニを言われるか分かったもんじゃないからな」

「先輩…」

「ナルトを頼んだぞ、テンゾウ。もう、あそこまで道筋をつけていたら、大丈夫だろうが…」

「わかってます。ただ…」

「ん?」

「約束して下さい」

ナニを、という変わりに、カカシはちょっと小首をかしげた。

「先輩、前にいいましたよね、ボクに…」

「………」

「自分の前で怪我をするな、血を流すな、って…」

「…ああ…」

「なら、今度は先輩が約束して下さい。ボクの…」

「……」

「ボクの見ていないところで、逝ってしまわないと…ボクに、誰が先輩の敵か分からないまんまで逝ったり…しないと…!」

カカシは、ちょっと一瞬眼を見開いたが、くすくす笑いだした。

「なんだよそれ、テンゾウ。お前が居ればオレに怪我、させないわけでしょ、で、お前が居ない時は、死ねない、となると、オレって不死身…?」

「そうですね、是非、それでお願いします。」

苦笑し合った二人だったが、これから闘う暁の実態を知った時、その嫌な符丁に眉をひそめることになった…


忍は死ぬのが仕事だ…

いつかそんな話をした事がある。

しかし、カカシもテンゾウも、子供達、誰一人として死なせたくはなかった。

多分、それは アスマも同じだ、と、彼らは信じていた。

end

Update 2008.10.30