小さな玉将


〜アスマに〜

***カカシ***


任務書を片手に火影屋敷を出たところで、紅にあった。
花束を片手に、可愛い幼子の手を引いていた。

「あら、カカシ、これから任務なの?」

くったくなく聞いてくる紅に、俺も苦笑しながら答える。

「そう。もう一月休み無しなのよ。綱手様になんか言ってやって。」

俺がそう愚痴ると、

「上忍が少なくなってるから、大変ね。無理しなくちゃならなくなってるけど…」
「……」
「気をつけるのよ、カカシ。」

俺はその言葉に無言で手を振るしかない…

いつまでも見送ってくれる紅と幼子に背を向け、振り返ることは出来なかった…


紅の嘆き…残されるものの嘆きは、俺の半生に影のように寄り添ってきた。


顔も知らぬ母も、英雄とうたわれた父も、年若い師も、その又師も…初めて出来た友、初めて持った弟子…
その全てに俺は置き去りにされた。


そうして、大切なものを作ることに臆病だった俺が、やっと手に入れた光…

太陽の光輝を宿すあいつを失うことがあれば…





***ナルト***


いつも飄々としてるカカシ先生が、今日は朝からおかしかった。

どう、と具体的に言えるもんじゃねえケド、俺には分かる。


第一、任務に遅刻しないで来るって、おかしくね?



どうしたんだってば?


そう聞きたくなるのを我慢した。



先生は瞳術を連発して、任務が終わる頃にはへろへろだった。




先生に肩をかして里に戻って、初めて気が付いた。


かわいい幼児を抱いた紅先生にあって。

初めて…

気が付いた……





蒼と深紅のオッドアイが遠くを見つめるのに我慢が出来ず、オレはあの人を後から抱きしめる。

「俺は何処にもいかねぇってば…アンタ残して、何処にもいかねぇって…」

そう何度も何度も耳元で繰り返し。


あの人の体から、寂しい翳が消えるまで…


end


Update 2008.10.16