七班のクリスマス


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疑似パラレルです…里に居るはずの無い人が平然と七班に戻ってたりしてます(笑)
そんなの平気さ、と言う方にお楽しみ頂ければ…
カカシ先生が好きすぎる木の葉の人達の話です(笑)
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「カカシッ あんた さっきから何やってんだっ!!」

上忍待機所にサスケの声が響き渡る。

指を指されて怒鳴られた本人は、「あ?」と首をかしげて、かわいらしく片目をぱちぱちと瞬いた。


◇◆◇


その老職人は、何十年もの間、ひたすら、小さな木彫りの根付けを彫り続けていた。
有名になろうとも、金儲けをしようとも思わず、ただ、ただ、自分が納得する物を作りたいが為に、精魂を傾けていた。
なので、己が彫る根付けが、いつの間にか幸運を呼ぶものだともてはやされるようになっても、飛ぶように売れて、儲かるようになっても淡々としていたし、少しは手抜きをしてもたくさん作ってもうければどうだ、とか、売値を上げてもうければどうだ、など、お為ごかしを言う者にも耳を貸さず、十年一日のごとく、変わりなく、その評判の根付けを彫り続けていた。


そんなある日。
彼の住む村が野盗に狙われ襲撃予告をうけ……詳しく言えば、老職人が その腕を偽金作りに狙われたのだが…村に観光客を呼び寄せてくれる大事な職人の事、一大事だと慌てた村長が火の国に助けをもとめ、火の国から一人の忍びが派遣されてきた。

村長は、たった一人で来た青年に、かなり不安げだったが、予告された襲撃の日が過ぎても何の変わりもなく、問題は片付いたと告げられた村長はあまりの簡単さにあきれ、報酬は、その老職人の仕事ぶりを見せて貰うことだ、と、その青年忍者に言われ、更にあきれかえった。



その老職人はじっと自分の手元を見つめる青年に首を振りつつため息をついた。
物好きにもほどがあると一度は断った老人だったが、物腰の落ち着いた穏やかな青年の様子に、忍者を初めて間近で見る老人はいささかなりと興味をひかれ、何とはなしに了解してしまっていた。


「見たからってどうなるもんでもねぇだろうが…そんなにみたいならこっちに来ねぇ!そこからじゃ見えねぇだろう」

何時間もぶっ続けで仕事をする自分、その間、退屈せずに見ていられるものか、と、高をくくっていた老人だったが、微動だにせず凝視する青年に、いつしか気を許していた。

「気持ちで作るんだよ。心を込める。言うのは簡単だがな。できあがりの出来不出来は関係ねえ。必死の気合いで彫ったものは心が入る。俺の根付けがどうこう言われる、それが本当だとしたら、俺が妥協なんぞしないからだろうな。」

いつもは口数の少ない老人に、そんな事まで語らせた不思議な青年は、銀の髪を揺らして、ニコニコと穏やかな笑みを浮かべながら、深く頷いていた……。


◇◆◇


年末が近くなると、どの国でも同じように若い連中は某イベントの準備等でそわそわし始めるが、それは火の国、木の葉の里でも同じ事、相手のいるものはお互いの都合をつけようと、あるいは任務を融通して貰おうと奔走しているのだが、決まった相手はいない、しかし意中の人はいる、と言う連中は、人知れず…あるいはバレバレで殺気立っていた。

毎年、多数の独り者の「意中の人」に、人知れずなってしまっている、某上忍は、その日も任務待ちで待機所にいた。

当人のスケジュールを把握しようと、最近の上忍待機所の人口密度はうなぎ登りで、いつもは面倒くさがって顔を出さないような上忍連中の姿も見える。


そんな中に響き渡ったサスケの声である。

普段なら、自分の微妙な立場を十分理解している、ナルト言うところの「出戻り」上忍のサスケは、大概のことはクールに無視してやり過ごし、針のむしろであろう幾多の、困難を極める任務を淡々とこなして目立つことを極力避けていたのだが…

「あ…びっくりした。お前でも大きな声だすんだ…?って何って何が…?」

分かっていないらしい木の葉の看板上忍は、相変わらずののんびりした口調で、座っている自分の前に仁王立ちになっているかつての生徒を見上げた。

相変わらず、口布を指先でずらし、右の人差し指を咥えたまま。

ふるふると震える指先で、口元を指され、ようやくカカシは、自分が指先を咥えて舐めていることを言われているのに気づいた。

そう、最前からこの看板上忍は、相変わらず18禁本を膝に、片手で口布をずらして、右手の人差し指の先を、咥えてちゅ、と音を立ててすってみたり、舌を出してゆっくり舐めあげたり、と、よからぬ下心を隠し持つ連中の煩悩を刺激しまくっていたのである。

「ああ、これ…?や、だって血が中々止まらないんだよね、気になっちゃって…」

そう言いながら見せた白い指先は、確かにあちこちに細かい傷があり、じわり、と、朱い玉が浮き上がってくる。
そして…また れろ〜と舌を出して舐めあげる…。

部屋の隅、あちこちで、う〜とかお〜とか言いつつ、前屈みになる連中が続出し、サスケも白い目元を染めつつ、声を大きくした。

「馬鹿かあんたは。舐めるから次から次へと出血するんだろうが!」
「ん〜〜そうなんだけどさ、気になっちゃってつい…」

と言いつつ、日頃滅多にお目にかかれない口元からピンクの舌がれろ〜っと…

流石にサスケが切れかけた時、

「ただいまってばよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

賑やかに火影候補筆頭が登場した。


うるさいやつが帰って来やがったと、舌打ちしているサスケに気付かないのか、微妙な雰囲気、微妙な視線を集める上忍師を見つけると、どたどたと忍者にあるまじき足音を立てて寄って来、

「今帰ったってば…あれっ センセ、怪我したんだってば?意外とどんくせーなっ」

そう言うなり、カカシの手首を掴んで自分の口元まで引っ張り上げると、ぱくり、と、朱い玉状に血を浮かせる指先を咥えた。




「!!!?!?」

声なき悲鳴がギャラリーから上がり、

「こらこら…」

指先を咥えられた本人は笑っていたが、即行でサスケがキレた。

「このウスラトンカチがッ!何しやがるっ!!」
「こんなの舐めときゃ治るレベルの怪我だろ、だから舐めたんだってば。なんか悪いかよ!」
「舐めて固まりかけた血が取れて余計に治りが遅くなるんだよ!」
「センセの指のことだろっ!何でサスケがキレるんだよっ!」

デコを付き合わせて歯を剥いて威嚇し合う二人をやや呆然と見上げていたカカシは、再び、癖になっているのか指先を口元に持って行きかけて…隣にそっと寄ってきていたヤマトに手首をとられた。

「先輩、やっぱり舐めてると、指が荒れて印を切りにくくなりますから。」

そう言って、ヤマトは消毒用アルコールのしみこんだ綿球で先細りの指先を消毒し、絆創膏を丁寧に巻き付ける。

「…!?!!」
「…!!!あっ 隊長っ何してんだってばよっ!」
「何してるじゃないよ、ナルト。唾液には消毒作用はあるけれどもね。口の中は雑菌だらけなんだよ。傷口が感染症を起こしたらどうするんだい。」
「俺が舐めたってそんなことにならないってばよ!」
「根拠がないその自信はどっからくるんだ、このドベっ!」

三つどもえの様相を呈してきた諍いを前に、ヤマトに手当てして貰った指先をためつすがめつしているカカシの横に、サイがそっと並んで座る。

「カカシさん、コーヒー飲みますか…?間違って余分に買っちゃって…」
「ん…?いいの?」
「二つも飲んだらお腹いっぱいになりますし…冷めたらおいしくないですから…」
「…だよね、それなら…遠慮無く…ありがと…」

「……あっ サイ、センセと何飲んでるんだってばよっ!」
「…コーヒーですよ。ブラックの。ナルトはミルクとか砂糖とかたっぷり要ったでしょう…?こんなの飲まないんだから…」
「俺はブラック派だっ」
「……サイ。カカシ先輩は紅茶党だよ…」

新旧七班の(かつての)子供たちに囲まれもみくちゃになりながらカカシは苦笑しながらされるが儘だ。

七班とは何の関わりもない周りの連中はよだれを垂らさんばかりに、カカシとじゃれ合っているのを見ている…と、其処に、

「何してんのよ、あんた達!」

ぴしり、とした高い声が響いた。
その声に厭と言うほど聞き覚えがある彼らは、ナルトは勿論、サイやヤマト、果てはサスケまで動きを止め口を閉じる。

「や、あのサクラちゃん、センセが怪我したから、手当を、ね、その。」
「僕がしたんだよ。手当は。」
「お前はかじったんだろうがウスラトンカチっ!」
「…コーヒー…を渡しただけですけど…」

「……怪我…?こんなに大騒ぎするほどの怪我なら、なんでアタシのところに来ないのよ!」

医療班のエース忍者は、ちょっと顔色を変えてカカシのところに小走りで寄ってきた。

「…や、サクラ、そんな大げさな…」
カカシが流石に引き気味で形相の変わったサクラから身体を引くが、彼女が逃がすはずがない。

何かのまじないの様に一本起てていた指をつかみ、ヤマトに巻いて貰ったばかりの絆創膏を剥がす。

「……?!」
「…ほら…たいしたことじゃないんだけど、なんかみんな どうしてか大騒ぎしちゃって…」
「…傷はたいしたこと無いけど、センセ、なんで指先がふやけてるの…?」
「…あ〜〜ついつい、舐めちゃって…」
「駄目よ、センセ、指しゃぶりって赤ちゃんみたいじゃないの」

ようやく声をほほえませたサクラは、申し訳なさそうなカカシの手を取るとチャクラを緩く回し始めた。


……

……


続く…



Update 2010/12/26