リフレイン
act.3


〜過去へ、そして未来へ〜




寄せては返す漣のように
想いはリフレインする

遠い過去に残した心は

再びお前のもとへもどるだろう

よせて来る浪のように
お前の足をあらう波のように

想いはリフレインする

繰り返し、繰り返し

リフレインする想い

お前が大好きだと、

繰り返し、打ち寄せる心
お前が好きだよと、
リフレインする心…






こつん…と、小さな石が、小さな少年の足元に飛んできた。振り向くと、少年と同じ年位の子供達が、こちらを見つめている。

「おまえの父ちゃんのせいで、里の”いしん”にきずがついたんだぞ。」
「お前、べんしょうしろよ」
「できねーんだろー」
「おきてやぶりー」

小さな…まだ六つか七つのその少年は、ため息をつくと、アンダーの口布を引き上げてくるりと背を向けると相手にせずにその場を立ち去ろうとした。
小さくても少年は既に中忍に昇格していた。アカデミーにも入れない同世代の少年達が、50人60人一度に飛び掛ってきたとしても負けるものではなかったが…

銀髪の、その小さな体を「掟破り」という言葉がひどく傷つけていた。

それに敏感に気付く子供達は、子供ゆえの残酷さで、更に言い募る。

「おきてをまもれねーやつは忍じゃねーぞ。里から出て行ったほうがいいってとーちゃんたちも言ってたぞ」

口々に言うことばが少年の小さな心を傷つけていく。
そして、それだけでは足りない、とでも言うように…銀髪の少年が抵抗しないとみるや、拳大の石をつかんだ一人が、背を向けている少年に、力いっぱい投げた。


きいん、という金属製の音がして、苦無がその大きな石を弾き飛ばした。


少年が投げたのではない。

石を投げた子供達もびっくりして辺りをきょろきょろ見回した。



そこに瞬身で現れたのは、見上げる長身と金色の…
派手な色彩を身に纏った、たくましい若い忍者だった…。


びっくりする少年…子供達、それらに委細かまわず、その大きな若者は、石を投げつけた子供の襟首を掴み、軽々と持ち上げると、
「おめぇ、掟がどーのこーの、ってぬかしやがったな?人に石を投げるのは掟やぶりじゃねーのか?ん?人としての掟に反してるってばよ?」
「な、な、なんだよ、にーちゃんは!大人の癖に、子供に…」
「うるせぇ!!悪いことした子供を叱るのは大人の義務だってばよ!!」
「わあああ!」

その若い忍者は、蜘蛛の子を散らすように逃げようとした子供達を、影分身で全員捕まえると、腰に抱え上げ、ゴメンナサイ!と少年に謝るまで尻を大きな手で引っ叩いた。

銀髪の少年はその有様を呆然と見ていた。

自分が、他の子供達からいじめられても、止めてくれる大人なんか、今までいなかった。

三代目がそれを大人たちに叱っても、「カカシはもう中忍なんだから、自分で身をまもれるでしょう」そういい逃れてしまっていた。

手加減抜きに子供達の尻をひっぱたいて教育的指導を行った若い忍者は、
「父ちゃんにいいつけてやる!」
と走り去っていく子供達にあっかんべーをしながら、笑っていた。

「あ、あの…」
幾分おずおずと話かけた少年に、その若い忍者はしゃがみこんで顔を覗き込んできた。
輝くような金髪、夏の晴れ間のような蒼い瞳。頬に冗談のような三本線。整った美貌なのに、その笑顔は底抜けに明るい。
いつも少年の家に遊びに来る父の部下の忍者にひどく印象が似ている。
「おめぇ、つええんだから、やられっぱなしになってんじゃねぇぞ。」
「…」
「筋のとおらねぇ事を我慢すんじゃねぇってばよ。犬といじめっ子は逃げると追っかけてくるもんだってばよ。がつんとやってやれよ、がつんと!」
「……お兄さん、おれのこと、知ってるの…?」
「………!!!お兄さん!?オ、オレの事か…?」
「う、うん…」
その若い忍者は、いきなり少年を抱え上げると、強い力で抱きしめて、
「うおおおおお!!カカシ先生にお兄さんって呼ばれる日が来るとはおもってもみなかったてばよおおおお!!」
と、少年には訳のわからない雄たけびを上げた。

「く、苦しいって!」
「ああ、いやぁ、わりぃわりぃ!」

やっと開放された少年は、
「はたけカカシです。ありがとうございました。」
そういってきちんと頭を下げた。
「おう!いいてばよ!オレってば任務中で名前を名乗れねーけど、お兄さんって呼んでくれていいってばよ。」
そういってにこにこ笑う若者を…小さなカカシは不思議そうに見上げた。

カカシはまだ幼いといっていい年だったが、天才といわれた父の血を引き、忍になるべくして生まれた、と周りを期待させる少年だった。
故に、この若い忍者が、並大抵の忍ではないことがわかった。

禁術である筈の多重影分身を易とも簡単に…そしてこの膨大なチャクラ量…多分上忍なのに…木の葉の上忍のはずなのに、おれ、見覚えが無い…

「えっと、カカシ…さん?」
じっと自分を見つめたままのカカシを、その若い忍者は戸惑ったようによぶ。
「…カカシでいいですよ、さん、なんて…」

するとまたカカシをぎゅうっと抱きしめ、

「だああああ!先生を呼び捨てに出来る日が来るとはああああ!」

と大声で叫びだした。

「く、苦しいって、お兄さん…!」
「カカシ先生にお兄さんって呼ばれたああ!!」

「…もう、なんなんだよ!」



その日、小さなカカシは、不思議な若い忍者に出会った。
その身に纏う強大な力と不釣合いなほどあけすけで陽気な笑顔。

幾つか、と訊ねられて、7歳だと答えると、その忍者は明るい美貌を曇らせ、切なそうな表情になった…





to be continued…



Update 2009.01.09

追記:サクモパパが亡くなったのは、カカシ先生が7歳の春、桜の木の下で、というMY設定でゴザイマス、蛇足ですが。