リフレイン
act.2


〜過去へ、そして未来へ〜


「新しいナルトの匂いは何処にもせんぞ…?」
「…そうか、ごくろうだったね、パックン。戻っていいよ」

四方八方に放っていた忍犬を戻し、カカシはナルトが消えた地点でじっと立ち尽くしていた。

もう一度空間を開けば、ナルトのいる次元へと繋がるのだろうか…

しかし、自分でもきちんと把握している術ではないのだ。

「…ナルト…どこに行った…?」

カカシは背後に人の気配を感じたが、見知ったそれに、振り向きもしない。

「カカシ。いい加減に休まないと体が持たんぞ。」

綱手のその言葉が聞こえているのかいないのか…

神威によってごっそり抉り取られるようになくなっている、その場所が、今のカカシにとって決してよい影響を与えていないのは綱手でなくても分かる。
しかし、カカシは、決してこの場を離れようとしない。

綱手は、今はもう彼女より、ずっと長身にそだった…かつての天才忍者の一人息子の寂しい背中を見つめた。

─20年以上前…アタシはお前を、お前の家族を守ってやれなかった。
   父親を失ってたった一人になった幼いお前を、アタシは十分に守りきれなかった…

   幸いにも、…あの時、お前は踏みとどまった。
   誰がお前を助けたのかは知らん。

   だが…

   アタシは同じ後悔はしない。
   お前も里の子。アタシの子供だ。
   今回はお前を守って見せる。ナルトが戻ってくるまで、お前を壊れさせたりはしないよ。

「カカシ。おまえ、体力を温存しておかんと、ナルトが戻ってきて盛られたら命の危機だぞ…?」

綱手のその明るい声に、ゆっくりと振り向いたカカシは、情けなさそうに眉尻をさげ、苦笑して…
その寂しい笑顔が苦痛に歪んだ。

「つ…なで…様…」

蛞蝓姫(なめくじひめ)の拳が、カカシの鳩尾にきれいに決まっていた…。


気を失ったカカシの長身を、五代目がかついで戻ったとき、医療班のメンバーは、一様にほっとして、二人を火影執務室の隣室に迎え入れた。







どすん…


と、ナルトが忍らしからぬ音をたてて、尻から落ちてきたのは…


「???いてててて…??って、あれ?」


手にしっかりとカカシの大切にしていたドッグタグを握っているのを確認すると、腰をさすりながら立ち上がり、辺りを見回す。

「な、なんだ、里に戻っちまったの…?」

あんな大騒ぎをして、里に戻っただけかよ、と、ナルトは頭を掻きながら自分を探しているだろうカカシの所へ急いだ。


−先生ってば、泣きそうな顔してたってばよ。かっわいかったなあ…

自分に必死で手を差し伸べながら、名を呼ぶ年上の恋人の様子を思い出して、ナルトは自然に笑顔になる。
いつも…ほんの子供のころから知られてしまっている。どんな間抜けなドジを踏んだか…どんなに未熟な子供だったか…
みんなみんな、情けない自分を知っている年上の、大人の恋人…

自分は相手の過去を何も知らないのだ。
いや、知ろうとしてこなかったというべきか。
つい先日、辛い幼少期を垣間見る機会があった。

俺がその場にいれば、カカシ先生につらく当たるヤツら、ぶっとばしてやったのに!

ナルトは自分自身も決して幸せであったとは言いがたい少年時代を過ごしてきていたが、彼は12歳でカカシに会うことが出来た。
それでおつりが来るってばよ。
そう思っている。
カカシ先生も…四代目に師事してたけど…あの人すぐに…先生おいて、死んじまって…

カカシの未来は自分と一緒にある。
しかし、その過去も、自分が共にありたかった、と思うのだ。

不公平だよな。先生ばっかり ちっさくってまだかっこわりぃ俺のこと、知ってるのって。
いくら、夜の関係では自分の方が主導権を握っているとはいえ…
カカシ先生が本気で嫌がったら、オレってば手を出せねぇってばよ。

という事は、彼が自分を受け入れて、体を開き許してくれている、という事だ。

だが…

−あんな必死でオレに手を伸ばす先生って初めてだったなあ。オレってば愛されてるよなあ。

心配しているだろうことが痛いほど分かるので、

−さっさと戻って安心させてやるってばよ。


だが…


「あ、あれ…?あれ…???ここ、木の葉と微妙に違わねぇか…??」


ナルトがカカシの神威に捲き込まれ、飛ばされた場所は、忍たちの戦闘の跡形もなく、鬱蒼と茂った森が広がるばかりだった。


「…オレ…何処に落ちちまったんだ…?」



呆然としながら、やはり木の葉の里(らしき所)に戻ったナルトは、それが神威に捲き込まれた所為だ、という事だけしかわからなかった。

…という事は…オレってばカカシ先生の目の前から消えちまったまんまだってばよ??

拙い。徹底的に拙い。

…心配してるってば。死ぬほど心配してるってばよ、カカシ先生…!!

今いる場所を確認して、戻る方法を考えよう、そう思ったナルトは、辺りを見回す内に、ふと火影岩が眼に入った。


!!!!


「な、な、なんだぁ…!???」


火影岩が…3つしかない…!?


「四代目とばーちゃんの顔岩はどーしたんだってばよ!!??」


to be continued…

Update 2009.01.03