Marmalade
Clap Log 2
「先輩…?トーストは何枚…?」
「何枚って…朝からそんなに食べられないよ…半分でいい…」
「半分って…どうやって焼くんですか!一枚食べましょうよ。また痩せたでしょう?」
そういって男はベットでシーツを巻きつけてくるまったままの恋人の顔を覗き込む。
「う、うーーー。ねむいーー。ったく 任務明けだからってしつこくしやがって…」
「はい、はい、スミマセン、謝りますから、さあ、起きてください。片付きませんよ。」
「………今日は一日おまえ、オレの言うこと聞けよ…家来な…!動けなくしたんだから…!」
動けなくしなくても、ボクはアナタのシモベですよ、と 男は笑って駄々をこねる恋人をそのまま抱え上げて食卓に運ぶ。
相変わらずテーブルにへたったままの恋人に、紅茶をいれ、トーストを焼く。
「マーガリンはヤダ。」
「はいはい、バターでしょ。」
「ママレード、いっぱいぬって。」
「……甘いでしょ、たくさんぬっちゃ…甘いの苦手なくせに…」
まだ半分夢うつつの恋人の…今は朝の陽にさらされた白い顔を覗き込みながら、男はそう嗜める。
「ママレードは…別…センセが…毎朝…いっぱいぬってくれたから…」
「………」
「残すと…泣きそうな顔をするから…無理して食べた…」
「……そうしたらママレードだけは食べられるようになったんですか…?」
「……ん…ん……」
まだ半分夢うつつの恋人は、過去の恋の残滓を ほろり ほろり と 零していく…
「…四代目は優しかったですか…?」
「…ん…強くて、弱くて…駄々っ子 だった…」
今のアナタのように…?
また、眠りにいざなわれていく白い瞼を少し哀しそうに見下ろしながら、男は恋人の、銀色にひかる髪をなでる。
次々になくして…
何もかもなくして…
それを淋しいことだとも知らずに生きてきた自分達は…
「も、駄目…テンゾ、眠い…ベッドに運べ! 食事…後…!」
「しょうがないなあ…」
男はテーブルに突っ伏したまま顔も上げずにそう要求する恋人をそっと抱え上げると、また、ベットに連れて行く。
また痩せた恋人をそっと大事に下ろし、カーテンを閉めようとする男のシャツのすそを白い手が引く。
「…なんですか 先輩 カーテンしめないとまぶしい………」
「………」
自分のシャツをぎゅっと掴んだまま、また眠りに落ちてしまった恋人の、その白い手を男は幸せそうに 握った。
end
Update 2009.03.24
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